宮崎市の中心市街地を走る、小型の電動バス「ぐるっぴー」に、4月、新しく鐘が取り付けられました。
その鐘は、綾町の鋳金作家の男性が制作したものです。どのような思いが込められているのでしょうか。

街を巡る小型電動バス 運転席のレバーを引くと鐘から「チン」いう音が

宮崎市の中心市街地を周遊する小型の低速電動バス「ぐるっぴー」。

その屋根に取り付けられたのが、こちらの鐘です。
運転席のレバーを引くと、鐘から「チン」いう音が響きます。

4月、お披露目されたこの鐘は、宮崎市の「まちなかグリスロ運行協議会」が市民からの寄付金を活用して取り付けたもので、進路変更や発進などの際に鳴らされます。

(宮崎市まちなかグリスロ運行協議会 日高耕平会長)
「チンチンという音を(聞いて)宮崎市民や観光客が振り向いてほしい。気軽に自分の足と思って乗ってほしい」

音のある街づくりを進めようと設置された鐘。
こうした鐘が緊急車両以外に取り付けられるのは全国で初めてだということです。

(ぐるっぴー利用客)
「楽しくていいじゃないですか。めったにああいう鐘の音は聞かない」

金属だけど、やさしくてやわらかい感じのものを目指して

綾町にひっそりとたたずむ小さな工房で作業を進めるこちらの男性。

「ぐるっぴー」の鐘を制作した鋳金作家の杉原木三さん(44歳)です。

(三三鋳金工房・鋳金作家 杉原木三さん)
「鋳造(鋳金)は、ほんの一瞬なんですよ。」

鋳金は、溶かした金属を型に流し込み、作品を作る金属工法のひとつ。
工房には青銅や真鍮、それに、錫などで作られた杉原さんの作品が並んでいます。

(三三鋳金工房・鋳金作家 杉原木三さん)
「うちの工房の作品はかわいらしくて、金属だけど、やさしくてやわらかい感じのものを目指して作っている」

杉原さんが鋳金作家になったきっかけは大学生の時。

宮崎大学で芸術を専攻していた杉原さんは授業で鋳金に触れ、溶けている金属の美しさに魅せられたといいます。

そして、大学を卒業後、東京芸術大学の大学院で本格的に鋳金の技法を学び、鋳金作家として2017年、綾町に工房を作りました。

通る街並みを刻んでいれてみたい

そして、去年6月、「ぐるっぴー」の鐘の制作を依頼された杉原さん。

まずは、鐘の原画づくりにとりかかりました。

杉原さんが描いたのは、アミュプラザみやざきや山形屋など中心市街地の風景です。

(三三鋳金工房鋳金作家・杉原木三さん)
「宮崎の『ぐるっぴー』ということで、通る街並みを刻んでいれてみたいなと思って。若草通りとかあって、この辺で左折して広島通り行って、また、駅の前に戻ってくるっていう、ルートの街並みを写した原画です」

今回、鐘には青銅が使われましたが、杉原さんは音が響きすぎないよう、錫の割合を通常よりも少なくするなど、配合を工夫して2つの鐘を完成させました。

納得のいく鐘の完成までに約1年

ただ、一つ苦労した点が…それは肝心な鐘の音でした。

(三三鋳金工房・鋳金作家 杉原木三さん)
「このハンマーのあたる場所があるが、ここの場所にもこだわっていて、微妙に響きが変わるじゃないですか。叩く場所で変わる」

思い描く鐘の音がなかなか鳴らず、試行錯誤の日々が続いたといいます。

(三三鋳金工房鋳金作家 杉原木三さん)
「『宮崎の音』を目指して、(まちなかグリスロ運行協議会の)日高さんと『あ~でもない、こ~でもない』と言いながらやった」

そして、およそ1年、ようやく納得のいく鐘が完成しました。

(三三鋳金工房・鋳金作家 杉原木三さん)
「『これが宮崎の音になるんだ』と、嬉しくてたまらなかった」

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。