栄養素が豊富で、様々な料理に使われる「卵」。おいしい反面、間違った扱い方をしてしまうと食中毒のリスクが出てきます。ある検査会社の実験では「生」よりも「加熱調理」したほうが菌が速く増殖するという結果も。どのような点に気をつければ、おいしく安全に卵を食べることができるのでしょうか。
卵かけご飯や、すき焼きなど、生でも食べる機会があるほど幅広い料理に使われている「卵」。
一方で、「サルモネラ属菌」による食中毒の原因となる食品としても知られています。
農林水産省によりますと、サルモネラ属菌による食中毒の症状は、おう吐、腹痛、下痢、発熱など。食後6~48時間に発症しやすく、乳幼児や高齢者は症状が重くなることがあるということです。
卵は、「加熱した状態」より「生」の方が、菌が増えやすいイメージを持っている人も多いと思いますが、実はそうではないのです。
抗菌作用がある卵白も加熱すると…
こんな実験結果があります。
食料品の衛生検査などを行う「くらし科学研究所」では、卵が「生の状態」と「加熱した状態」では細菌の数にどのような変化が起こるのか調べました。
▼グラフ:サルモネラ属菌の経時変化
実験では、食中毒の原因ともなる「サルモネラ属菌」と「黄色ブドウ球菌」を、「生卵」と「ゆで卵」に添加し、25℃の環境下で保存。
その結果、12時間後と24時間後の細菌数にこのような変化がありました。
▼グラフ:黄色ブドウ球菌の経時変化
「生の卵白」以外は、時間の経過とともに菌の数が多くなっています。
「卵白」には抗菌成分が含まれているため、「生」の場合は菌が増殖しませんが、加熱することで抗菌成分の性質が変化したり失われたりします。
そのため、「卵白」も加熱すると菌が増殖するというのです。
卵を洗ってから冷蔵庫に保管するのはNG
日本では通常、流通過程でパックに詰められる前に卵殻の表面の洗浄と殺菌がされるため、サルモネラによる食中毒のリスクはかなり低くなっています。
(2021年に農林水産省が発表した調査データでは、全国の市販鶏卵のうち卵の中身がサルモネラ属菌で汚染されていた割合は0.0027%程度と試算されています。)
しかし、汚染率が低くても間違った保管方法や扱い方をしてしまうと食中毒のリスクはゼロではありません。
安全に食べるためにはどんなことを心がけたらよいのでしょうか。
食品の微生物検査などを行う「東邦微生物病研究所」によりますと、以下のようなことがポイントだといいます。
ー保管方法の注意ー
①「生食」の場合は賞味期限以内に!
賞味期限は、万が一、卵内にサルモネラ属菌が存在している場合に「生食」しても問題が生じない期限のこと(殻付き卵の「冷蔵保存」が前提)
②卵を洗ってから冷蔵庫に保管するのはNG
パックに詰められる前に洗浄・殺菌処理が実施されているため、殻の表面を水で洗うと、無数にある微細な穴から雑菌が卵の中に侵入する可能性
③割った卵は、室温下で放置しない
特に卵黄と卵白を混ぜると細菌が増えやすくなるという報告も
ー調理方法の注意ー
①賞味期限が過ぎた卵は、十分に加熱して食べる
75℃以上で1分以上または65℃で5分間以上加熱
②ヒビが入っている卵は、しっかり加熱して食べる
③卵を割った後、混ぜた後はすばやく調理する
④調理後はしっかりと手洗いし、使用した調理器具・食器類は十分に洗浄・消毒する
また、乳幼児や高齢者、免疫機能が低下している人は、なるべく生卵を食べないようにするのがおすすめだということです。
飲食店は毎日卵を仕入れるなど工夫
食中毒などのリスクを減らすために、卵を扱っている飲食店ではどのような対策をしているのでしょうか。
富山市でオムライスなどの卵料理を提供しているレストランでは…
①できるだけ新鮮な卵を使用するため、1日に使う分だけを毎日仕入れている
②卵を割ってかきまぜたものを大きなボウルに入れて使用しているが、状態が悪くならないよう、必要な分を取ったらすぐに冷蔵庫に入れている
③オムライスは半熟のため、テイクアウトの際は早めに食べていただくよう注意書きをしている
主にこのようなことを意識して行っているということです。
たんぱく質や鉄分、カルシウム、ビタミンなど栄養素も豊富な卵。
保存法や調理後の扱いに気をつけ、おいしく安全に食べましょう。
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