コンビニ感覚の「chocoZAP」が全国で急増するなど、コロナ禍で落ち込んでいたフィットネス需要が回復してきています。街のあちこちにみられるスポーツジム…通い始めのころは、張りきってしまい筋肉痛に悩まされたという人もいるのではないでしょうか。運動と切っても切り離せない「筋肉痛」はなぜ起こるのか…、数日置いてから症状が出るのは年齢のせいなのか…、整形外科医に聞いてみました。

筋肉痛の程度は親から子へ “遺伝” する?

帝国データバンクによりますとフィットネス事業を手がける大手15社の店舗数は、2023年度末時点で2020年度末から1000店舗以上増え急拡大しています。

コロナ禍で落ち込んだスポーツジム等を含む「フィットネス市場」が、回復傾向にあり、2024年度は、コロナ前に近い7000億円に到達する可能性があるとされています。

帝国データバンク調査

福利厚生としてジムの利用を取り入れる企業が増加していることや、「chocoZAP」のような低価格・小規模のジムが全国展開し始めたこと、さらに健康や美容に関心を持つ層が増えたことなどが追い風になっているとみられています。

帝国データバンク調査

手軽にジムに通うことができるようになっている今、しばらく運動をしていなかった人が急にはりきって運動をし、つらい筋肉痛に悩まされるということも少なくはないはずです。

近年の研究では、筋肉の損傷の程度には親から子へ受け継がれる “遺伝的素因” が関係しているとの報告もあるといいます。

今回、筋肉痛の仕組みや年齢による違いなどについて、専門医に聞きました。

筋肉痛は「筋肉の耐久力を超えた運動」から

記者「そもそも筋肉痛はなぜ起こるのでしょうか」

長田整形外科クリニック・長田茂樹医師:「現代医学でも、筋肉痛が起こるメカニズムについては、まだ完全に解明されていませんが、筋肉痛は、『筋肉の耐久力を超えた運動』をすることに起因して発生します。負荷の大きな運動や長時間の運動、もしくはその両方を行って筋肉が耐えられるレベルを超えると痛みが生じます」

長田医師によりますと、以前まで筋肉痛の原因は、乳酸などの疲労物質がたまることだといわれてきたとのことですが…

長田整形外科クリニック・長田茂樹医師:「普段使わない筋肉を使ったり、負荷の大きい運動をしたりすると筋線維(筋肉を構成する細胞)に小さな傷がついて、それを修復する過程で炎症反応が起こり、これに伴い痛みを引き起こす物質が分泌され筋肉痛が生じるという説が近年では主流になってきています」

若い人でも筋肉痛は遅れて発症する場合が…

記者「よく、年を取ると “筋肉痛があとから” 出てくるということを聞きますが、年齢によって筋肉痛が起こるスピードは変わるのでしょうか」

長田整形外科クリニック・長田茂樹医師:「医学的には加齢によって筋肉痛が起こるスピードが遅くなるとは明言されていません」

「そういった話をよく耳にするのは、単に加齢というよりは体を動かす頻度が減ったり、若いときよりも激しい運動を行う機会が少なくなったりすることが理由ではないかとされています。筋繊維は使わないと細くなり、ちょっとした負荷でも損傷しやすくなります。若い人でも、日頃の運動習慣がない場合には筋肉痛が遅れて生じる可能性があります」

筋肉痛が発症するスピードと年齢に直接の関係はありませんが、長田医師は、運動で生じる“筋肉の損傷”は、若年成人に比べて高齢者のほうが程度が大きく、回復にも時間がかかるといいます。

適切な負荷や食事の改善で筋肉痛予防

では、筋肉痛が起こりにくい、ひどくならないために身近にできることはあるのでしょうか。

長田整形外科クリニック・長田茂樹医師:「筋肉痛が起こりにくい体を作るためには、以下のことが効果的です」

適切な負荷:初心者はいきなり激しい運動をするのではなく、徐々に負荷を上げていくことが大切。
ウォーミングアップ:運動前に必ずしっかりと体を温めることで、筋肉の柔軟性を高め、損傷を防ぐ。
クールダウン:運動後にストレッチを行うことで、筋肉の緊張を解きほぐし、回復を促す。
バランスの取れた食事:タンパク質を十分に摂取することで、筋肉の修復をサポート。
十分な睡眠:睡眠中に成長ホルモンが分泌され、筋肉の修復が促進。

長田整形外科クリニック・長田茂樹医師:「久しぶりにスクワットをすると太もものあたりが筋肉痛になりますが、1週間に1回程度のペースでかつ同じ強度で繰り返し継続していると筋肉痛は起こらなくなります」

よく耳にする「筋肉痛が遅れてきたから年を取った」という話、医師に聞いてみると単に加齢が原因ではありませんでした。

実は若い頃より運動の機会が少なくなったことで筋肉の損傷が大きくなり、回復までの時間も長くなるため、筋肉痛が遅れて生じるということです。

急な運動によるつらい筋肉痛を防ぐためにも、日頃から適度に運動する習慣をつけることが大切です。

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