人気の秘密は…「素材が生きる氷」

熊本県人吉市のカフェ『永田村右衛門ROASTERY』には、かき氷を目当てに客がやってきます。

来店客「ふわふわしているのと、すももの果肉がはいっているのがすごくおいしい」
来店客「するする いける感じ」

1番人気は生イチゴのかき氷。

さらに自家焙煎のこだわりコーヒーを使ったかき氷も。この時期、ほとんどの客が注文するというかき氷。人気の秘密は氷にあります。

永田村右衛門ROASTERY 江﨑美花さん「氷が純氷を使っているので風味が生きてくる、素材が全部おいしく感じます」

その氷を作っているのが、1927年創業の「人吉冷蔵」です。製造工程を見せてもらいました。

水を入れ替えながら作る『透明な氷』

人吉冷蔵 山賀隆司 代表「昨日つけた氷になります」

氷に使用する水は、川辺川の伏流水(※)。管に入れたその水を、外側からマイナス10℃の水で冷やしていきます。冷やすための外側の水は常に動いているため、凍ることがないということです。

※伏流水(ふくりゅうすい)…水が地面にしみ込みやすい場所では、川の水が地中に入って流れる。この地下を流れる水を伏流水という。

水を使って少しずつ凍っていきますが、その工程で手間をかけます。

不純物が多い水を抜く様子

山賀代表「エアーを入れてかき混ぜるんですよ、真ん中に不純物がたまっていきますので、それを抜き取ります。そしてまた新しい地下水を入れて凍らせます」

ただ水を凍らせるのではなく、不純物が多い水を抜き、新たな水を入れ透明な氷を作り上げます。

山賀代表「48時間(2日)かけて氷をつくる。無味無臭で溶けにくいのが特徴です」

1日で作ることもできますが、品質に違いがあるそう。

山賀代表「(1日でつくると)純度が変わってしまい溶けやすい氷になってしまう。できるだけいい氷を作りたいから」

こうして、かき氷にした時にシロップやフルーツの味を引き立てられる氷が完成します。

約130キロの氷を多い時で1日に100本ほど作る人吉冷蔵ですが、4年前、豪雨の被害を受けました。

泥水で無残な工場を前に『終わりだな』

近くを流れる球磨川が氾濫し、工場を襲いました。

氾濫した球磨川(右下の建物が人吉冷蔵の工場)

山賀代表「2階建ての工場と冷凍庫があったが、1階は全部水没してしまって。翌朝の5時に水が引いて(会社にくると)もうひどい状態で、泥水で見るも無残な」

工場は取り壊すしかありませんでした。

山賀代表「『これで終わりだな』と正直思いました」

それでも、周囲の人からの応援を受け、人吉冷蔵は復活に向け動き出しました。

山賀代表「人吉・球磨には氷屋がないから、当社が無くなったら夏祭りも出来なくなりますし、そういう使命感もあって『やるぞ』という気持ちで」

励ましあいながら前進、営業を再開

被災した翌月には別の製氷会社から氷を仕入れ営業を再開。そして、去年12月には工場の再建が完了し、製造を再開させたのです。

人吉冷蔵の氷でかき氷を作るカフェも豪雨で被災。励ましあいながら前進してきました。

永田村右衛門ROASTERY 江﨑美花さん「復活出来ればという話は毎回していて、人吉冷蔵が再開した時には皆さん大喜びで」

工場が復活して初めての夏。かき氷が地域の人を笑顔にしています。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。