今年6月にリニューアルオープンした「神戸須磨シーワールド」。560種類、約1万9000の生き物が展示されているほか、西日本で唯一シャチのパフォーマンスを楽しむことができる施設に生まれ変わりました。オープン前には、古い施設から改修された新しい住まいへ、生き物たちもお引越し。しかし一方でいなくなってしまった生き物もいたのです。一体どこへ行ったのか?MBS山中真アナウンサーが行方を追いました。

スマスイで保護してきたカメたち…一体どこへ?

 “スマスイ”の愛称で親しまれた「神戸市立須磨海浜水族園」。そこにあったのがカメの楽園、その名も「亀楽園」です。2010年に外来種のカメの研究保護施設として誕生。暮らしていたのは9割以上が外来種のアカミミガメ、通称ミドリガメと呼ばれ、ペットとして日本に持ち込まれたものです。

 寿命は40年と言われ、ペットとして飼えなくなった人たちが外へ逃がすなどして日本各地で急増。農作物を食い荒らすなどの被害が出ていました。そこでスマスイでは、アカミミガメを捕獲して持ち込むと入園料を無料にするなどの取り組みを行って、亀楽園で保護してきました。

 一時は700匹を超えていたとみられるアカミミガメですが…新しい施設に亀楽園はありません。あのカメたちは一体どこへ行ったのか。新施設の担当者に話を聞くと…

 (神戸須磨シーワールド広報 岡光敏宗さん)「計画の中ではミシシッピアカミミガメの展示の予定はあったのですが、日本の在来種のカメの繁殖に力を入れたいということで今回はニホンイシガメの繁殖に力を入れていて、外来種は展示がないという形に。(亀楽園のカメは)イズーという施設に移動しております」

 大量のミドリガメを全て引き取った施設がある、とのこと。取材班は早速、静岡・河津町浜にあるというその施設に向かいました。

カメの新たな住まいには爬虫類がいっぱい!?

 やってきたのは400種1000匹以上の爬虫類を飼育・展示する日本最大の爬虫類動物園「体感型動物園iZoo」です。

 「体感型」とあって施設に入ると足元にカメがいるなどとにかく距離が近い。放し飼いされたリクガメのゾーンや、ガラパゴス諸島に住む希少なゾウガメとも並んで記念撮影。小型の爬虫類を抱っこすることもできます。さすがに触ることはできませんが、体重800kgのイリエワニに、猛毒のキングコブラも。日本でiZooにしかいないという絶滅危惧種のイグアナは…

 (山中アナ)「なんなんですか、これ…3段重ね、5段重ねくらいになっていますよ」
 (園長)「日光浴するときに自分がよく当たりたいので、他人の上に乗っかっているんですね」
 (山中アナ)「人を蹴落として自分が前に行く。まるで爬虫類界のMBSアナウンサー室。こんな感じでね、蹴落として、先輩の背中の上に平気で乗ってくる後輩がいるんですよ」

 思わず調査を忘れそうになりますが、本題のスマスイのカメは…
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 (山中アナ)「えっ、うじゃうじゃ!ここは?」
 (園長)「ミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)を引き取ってこちらの池に収容しています。日本全国からここに来ていますし、スマスイからもここに来ています」
 (山中アナ)「何年か前に会った子たちと僕は今再会しているんですね。だから寄って来てくれたのかな?」
 (園長)「エサが欲しいだけですね」
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 スマスイから引き取った164匹のカメは新たな楽園で暮らしていました。

 (園長)「スマスイもアカミミガメを引き取ったりして飼育をしていたんだけれども、改修するということでカメを継続して飼育することができなくなった。ご相談いただいて、引き取れるか?ということだったので、私が引き取りにいきました。カメを殺処分しなかったスマスイさんもそれなりの志があったし、それを引き継いだということですね」

「カメは悪者ではなかった…殺されるなら助けてあげたい」

 園長の白輪剛史さんは、スマスイのカメだけでなく、2012年の開園当初から家などで飼えなくなったアカミミガメの引き取りを行っています。

 (白輪剛史園長)「日本人はカメが大好きなんですよ。勤勉、努力家、長寿。カメっていう存在は悪者ではなかったわけですよ。カメさんって呼ばれる存在が、いきなり外来種ということで悪者になってしまった。それで殺されるんだったら助けてあげたいなっていう気持ちが一番大きい」

 白輪園長は、爬虫類の輸入業も行っていて、それもカメを保護する大きな理由の一つです。

 (白輪剛史園長)「自分が販売してきたのに『売られていった後はもう知らないよ』というのはちょっと筋が違うかなと思っていて。そこで自分ができることは何かなと思ったときに、引き取って自分が飼うことだなと思った」

 引き取り依頼はほぼ毎日全国から寄せられていて、6年前の2018年には専用の巨大な池を増設。今は約1000匹のカメがここで暮らしています。

“ペットを殺処分したくない人の最後の砦になれば”

 取材した日も15年以上飼ったカメを抱えた女性が来ていました。

 (飼い主)「埼玉から来ました。飼っていたミドリガメさんを引き取ってくださるということで、本当に助かって」

 お祭りで子どもたちがとってきたというカメ。子どもたちが巣立ち、最近、夫にも先立たれたため、もう世話をするのが難しいと手放すことを決意しました。

 (飼育員)「甲羅の状態とかもすごくキレイで、大切に飼われていたんだということがわかりますね」

 (飼い主)「寂しいです。子どもよりも私が世話をしていたものですから。ずっときのうから写真を撮ったりしていたんです」

 (飼育員)「大切に飼育いたしますのでご安心ください」
 (飼い主)「ありがとうございます。またね、また来るよ」

 iZooの池では、最大で8000匹を飼育できるそうで、アカミミガメの野生化を防ぎ、ペットを殺処分したくないという人たちの最後の砦になれればと、白輪さんは話します。

 (白輪剛史園長)「地域によってね、遠い所の方は本当に大変な思いをして飛行機で連れてくる方もいらっしゃるんですよ。そういう方々が身近なところでカメを殺さずに引き取ってくれる所があればいいなとは思うんですけど。飼い主が最後まで飼ってもらうのが一番だけれども、理由は聞かないですから、とにかく連れてきていただければうちは引き取るよっていうことで、どうにか最終的に収まればいいかなと思っています」

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