リビングの棚にずらりと並ぶ自作の鉄道模型の数々。懐かしの特急「こだま」や「月光」の姿もある。「空き箱や廃材、石粉粘土などで作っています」。神戸市内の自宅の庭で模型を撮影しながら、池内孝行さん(70)は得意げにほほ笑んだ。

SL運転士だった父の影響で鉄道好きになった池内さんは、退職後の趣味にと鉄道模型作りを始めた。ただ、市販の物は種類が少なく、費用もかかることに悩んでいた時、張り子の獅子舞飾りを見て「この方法で模型を作れる」とひらめいた。

自作のルールは「お金をかけず、身近な物だけで仕上げる」。車両には空き箱、車輪はホームセンターの安価なキャスター、ライトは100円ショップのデコシール、窓は弁当箱のふた、ワイパーは妻の貴世さん(67)のヘアピンを使っている。

形はリアルでも縮尺は池内さんの気分次第のため、「大きさがバラバラで一緒のレールに乗せられない」と貴世さんは不満そうだが、資材集めに同伴するなど家計に優しい趣味を応援している。

模型作りを始めて5年。千葉県の障害者支援施設いすみ学園から、学園の敷地内に展示され、憩いの場にもなっている鉄道車両の修繕記念に「模型を作ってほしい」と依頼された。池内さんは無償での寄贈を申し出て、約2カ月かけて長さ90センチの大作に仕上げた。初めての納品は業者に頼まず、「娘を嫁がせる気持ち」で自らハンドルを握り、千葉まで届けた。

自信を深めた池内さんは模型の作り方もインスタグラムで公開。「鉄道ファンだけではなく、子どもたちの夏休みの課題などで活用してもらえたら」と話している。【時事通信映像センター】

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