今年4月から高野連に加盟した広島市西区にある高校の硬式野球部。試合が出来る喜びを噛みしめながらがむしゃらにプレーする選手と監督の思いに迫ります。

固いコンクリートの上で黙々とバットを振る生徒たち。彼らは「広島修道大学ひろしま協創高校」の野球部員たちです。

学校は2019年に女子校から男女共学に。
生徒を確保し学校を盛り上げるきっかけにしようと去年4月、野球部を創部しました。

【1年(当時)砂連尾寛大くん】
「一期生っていうものに憧れて一から始めてみたいと思ってきました」

しかし野球部は今年3月まで高校野球連盟に加盟できなかったため、一期生として入部した5人は、規定により1年間公式戦への参加や他校との練習試合を行えませんでした。

【1年(当時)加藤幸誠くん】
Q.中学時代のチームメイトで試合に出てる子もいる?
「います」
Q羨ましいと思うことある?
「それは思います」

専用のグラウンドはなく、練習は他の部活の場所を間借りしている状況です。
鍛錬を積み重ねてきた5人と監督。念願だった初の練習試合を4月中旬に行うことが決まりました。

【1年(当時)常盤大空くん】
「一年試合がないままやってきたので、やっと試合ができる楽しみな感じもあって」

【修大協創高校硬式野球部・谷口直哉監督】
「当然、勝ち負けもあるんですが、それ以上に一期生の子らと野球の試合ができるっていうことで、大変楽しみにしています」

迎えた練習試合当日…

「気をつけ!礼!」
「お願いします!」

新たに1年生9人を迎えて挑む相手は、過去、夏の甲子園に出場した経験を持ち、自分たちのおよそ6倍の部員がいる山陽高校です。

【吉永京介くん・常盤大空くん】
Q緊張していない?
常盤「いや、今のところまだ大丈夫です」
吉永「いけるっす。きょうは楽しみです」

期待に胸を膨らませウォーミングアップに臨む選手たち、ですが…試合が近づくにつれ徐々に緊張した面持ちとなっていきます。
見かねた谷口監督、選手たちに思いをぶつけます。

【修大協創高校硬式野球部・谷口直哉監督】
「いいか、ひるむな。(部員の)数じゃないんじゃ。ここ(ハート)や。特に1期生、何が何でも全力で走れ!とにかくやる最後まで一生懸命、これまで支えてくれた人や応援してくれる人に最後まで1試合を全力を尽くせ。それができることや」

部員への愛が選手を奮起します。

【1年・松浦尚輝くん】
「2年生のために全力疾走であきらめずに戦っていきたい」

(試合開始)「始めます!礼!」

【2年・常盤大空くん】
「ちょっと…だんだん緊張してきました」

協創は先攻でスタート。
初回、先頭バッターがフォアボールを選び出塁しますが…
キャッチャーからの鋭い牽制でタッチアウト。
後続も倒れ初回は0点で終わります。

協創の先発は高校からピッチャーを始めた2年生の吉永。
1番・2番を連続で打ち取りますが…

【修大協創高校硬式野球部・谷口直哉監督】
「常盤!(構えは)来るところでいい」

(4~6番に連続安打)
2アウトから制球を乱し、さらに味方のエラーも重なり、この回5失点、厳しい洗礼をうけます。

(1回終了時)
吉永「すみません。打たれました」
監督「もういい?」
吉永「いやいけます。吹っ切れました。投げます」

2回の攻撃…
6番の1年生・藤井がチーム初ヒット!
さらに続く2年生・常盤も対外試合初のヒット!
ツーアウトからチャンスを作りますが、後続が続かず、待望の1点とはなりません。

一方の守り、吉永は再び山陽打線の猛攻を浴び、3回までに8点を失います。

【谷口監督と吉永くん】
監督「平常心だった?」
吉永「はい」
監督「平常心で、もしあのパフォーマンスだったら、みてあのスコア、何点入った?」
吉永「8です」
監督「勝てると思う?」
吉永「負けます」
監督「自分の今までの行いや取り組みを見つめ直さないといけん」

4回以降も山陽の猛攻を浴び5回までについた点差は16点に。
肩を落とす選手たちに谷口監督は熱い気持ちを吹き込みます。

【修大協創高校硬式野球部・谷口直哉監督】
「16点入ったけど、はっきり言ったら試合に勝つことは無理。でも人の心を動かすことは絶対できると思うんよ。だから最後まであきらめちゃいけん。見に来ている人のためにも。今できることを最後まで取り組むしかないと思う。最後までやり切れ!」

最終回、協創の攻撃、1アウトからランナーを出しますが…
(最後のバッターセカンドゴロ)
協創野球部の初めての練習試合は0対19という結果で終わりました。

【修大協創高校硬式野球部・谷口直哉監督】
「1つ知ってほしいのは、特にユニホームを着ているものはこのままでいいのかどうか。試合は負けたけどまたここからよ。この”19点”が自分たちにとって何を意味するのかよく考えなければいけない」

【2年・小川隆太郎くん】
「やっぱり2年生が主体としてやっていかなければならないと思うし、今の練習態度では(勝つのは)無理だと思うから、次に山陽ともしやることがあったら、次はみんなで勝ちましょう」

【修大協創高校硬式野球部・谷口直哉監督】
「また子どもたちともう一回振り返って一緒に走ってやっていきたい。絶対にこの悔しさを忘れずに夏にぶつけていきたい」

初の練習試合からおよそ1か月…。チームにはさらに4人の部員が加わり18人となりましたが、今も学校の坂や近くにある有料の室内練習場などで練習に取り組んでいます。

【1年マネージャー・藤野さおりさん】
「(このチームは)まとまりがあっていいなと思う」

山陽との試合で互いの声掛けが上手く出来なかったという反省から、今の練習では緊張感を作るべく常に声を出すことを意識しています。

【修大協創高校硬式野球部・谷口直哉監督】
「(山陽戦後)”悔しい”ということで、練習に対する意識や、野球は試合に勝ってこそだと子どもたちが実感できたと思う」

大敗から学んだ自分たちの弱みを素直に受け止め、愚直に課題と向き合う選手たち。

【1年・藤井蒼稀くん】
「先輩たちと1つでも多く勝てるようプレッシャーを感じつつ、しっかり投げられたらと思う」
【2年・常盤大空くん】
「応援してくださる方がいるので、その人たちに恩返しが出来るようになりたい」
【2年主将・加藤幸誠くん】
「(夏の大会は)これが最後だという気持ちで、相手に負けない勢いで、今までやってきた声掛けを徹底していきたい」

あの試合から一皮むけた高校球児たち。
協創ナインは更なる進化を誓い、およそ1か月半後に迫る夏の大会へと挑みます。

<スタジオ>
【元カープ・安部友裕さん】
「いろんな思いを持って野球部に入ってボールを追いかけていると思う。勝ち負けが必ずあることなので、そこから自分を知って、しっかり個性を磨きながら、今後どんどん強くなっていってほしい」

【JICA中国・新川美佐絵さん】
「春に高野連に加盟したというときに、彼らが野球部がないのを分かっていてもゼロからつくっていく、道を開拓していくんだ、とおっしゃっていたので、その意気込みだけはこれからもずっと持ち続けてほしい」

今週末の日曜日(6月2日)に山陽高校と再戦するということで、リベンジを果たしていただきたいですね。

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