大の里(左)を攻める照ノ富士=両国国技館で2024年5月12日、幾島健太郎撮影

 十両以上の関取の象徴が大いちょうだ。しかし、約110年ぶりの新入幕優勝を果たした先場所の尊富士に続いて、今場所も大いちょうが結えない、幕内3場所目でちょんまげ姿の新小結・大の里が初優勝した。若手の壁になるべき看板力士、横綱・大関のふがいなさが改めて浮き彫りになった。

 短髪から大いちょうを結えるようになるまでには、1年半から2年かかると言われる。尊富士は初土俵から所要10場所、大の里は幕下10枚目格付け出しデビューから7場所で賜杯を抱いた。ともに大学相撲部出身で出世が早すぎて、まげが追いついていないのが現実だ。

 一方、横綱・大関陣は、15日間の入場券は場所前から完売していたにもかかわらず、1横綱4大関全員が初日に敗れた。出場した横綱・大関陣が初日に総崩れとなるのは、昭和以降で初のことだった。三役以上の9人のうち、半数を超える5人が一時休場し、不戦勝の取組には観客の「えー」という大きな落胆の声が館内に響いた。結局、優勝争いを引っ張ったのは大関2場所目の琴桜だけだ。

 千秋楽の協会あいさつで、八角理事長(元横綱・北勝海)は「横綱・大関の休場は大変遺憾」と述べた。場所前の横綱審議委員会の稽古(けいこ)総見もかつてのような緊迫した雰囲気が感じられず、親方衆の中には稽古の質、量両面での不足を指摘する声がある。角界には古くから「番付一枚違えば家来同然」という言葉があるが、看板力士が自らの役割を痛感しない限り、番付の重みはさらに失われていく。【武藤佳正】

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