【埼玉-BL東京】試合後、ファンに手を振る埼玉の堀江翔太=国立競技場で2024年5月26日、長澤凜太郎撮影

ラグビー・リーグワン プレーオフ決勝(26日・国立競技場)

○東芝ブレイブルーパス東京(BL東京)24―20埼玉ワイルドナイツ(埼玉)●

 試合終了間際、仲間の逆転トライで王座奪還――。今季限りで現役を引退する埼玉のFW堀江翔太選手の最終戦は、美しい終幕を迎えたかに見えた。

 しかし、歓喜の輪の横で協議を始める審判団。映像で確認した結果、直前にボールを前に投げる反則があったとして、トライは取り消された。パスを出したのは堀江選手自身。「(シーズン)全勝して優勝、引退って漫画やドラマみたいにいかないのが僕らしくて。うまいこといかんなって神様に教えられた感じです」と苦笑いした。

【埼玉-BL東京】後半、試合に途中出場する埼玉の堀江翔太=国立競技場で2024年5月26日、長澤凜太郎撮影

 ドレッドヘアを結び、パンツの裾をまくり上げる。自由奔放な印象そのままの常識にとらわれないプレーと、秘めた闘志や向上心でファンを魅了した。原点は大阪・島本高時代。「花園」など全国大会出場はなかったが、ラグビーは楽しいと体中で感じた。

 「当時あまりFWがキックを蹴ることはなかったが、ドロップキックなど自由にやらせてもらった。どうしたらチームを勝たせることができるか、考えながらプレーすることが楽しかった。『もっとラグビーを学ぼう』という気持ちになれた。楽しいからずっと、ラグビーをやり続けた」

 帝京大を経て2008年に入団した当時のトップリーグ・三洋電機(現埼玉)では当初、仲間のスター選手のサインをファンに頼まれ、色紙を持ってピッチサイドを走った。それでも南半球最高峰リーグ・スーパーラグビーへの武者修行などで実力を伸ばし、日本代表でも11年から4大会連続でワールドカップ(W杯)に出場した。

 「必死過ぎて。チームを引っ張ったろ、みたいな感じじゃなくて自分が成長せんと、周りに良い影響を出せないと思ってやってきた。そこらへんがチームのためになっていたらうれしい」と控えめに語るが、キャリア終盤は圧倒的存在感で精神的支柱となり「ラスボス」の異名もとった。一つ一つの言動が、日本ラグビーの普及や裾野拡大にも大きな功績を残した。

 激闘の余韻が残る国立競技場。ラスボス「らしい」別れのあいさつが響いた。「本当に悔いなくラグビー人生を終えることができて、もう生まれ変わってもラグビーはしません(笑い)。それくらい幸せなラグビー人生を歩んできたと思います」。味方も敵も関係なく、客席の5万6486人が一つとなって大歓声を浴びせた。【角田直哉】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。