(20日、春季関東地区高校野球大会準々決勝 白鷗大足利5―0東海大相模)
東海大相模(神奈川)は2021年の選抜大会優勝など実績十分な相手だ。先発は長身から150キロ近い直球を投げ下ろす本格派右腕で、得点を奪うのが難しいことも予想できていた。
だからこそ、白鷗大足利(栃木)の背番号「10」、山口幸大は攻撃のリズムに少しでもつながるように、テンポ良い投球を心がけた。「ランナーを出しても焦らず、落ち着いてコースを突こう」
0―0の六回、1死二塁で4番を迎えた。前の試合で本塁打を放っている強打者だ。
カウント2―1からの4球目。思い切り腕を振って直球を投げ込み、空振りを奪った。1球ボールをはさみ、フルカウントとなってからの勝負球も直球。142キロで遊ゴロに打ち取った。後続も断つと、直後に味方が一挙5得点を挙げた。
8回を92球で無失点。許した安打は単打5本で、連打は許さなかった。
チームには、150キロ超の直球を持つプロ注目の大型右腕・昆野太晴がいる。昨秋の県大会決勝では昆野の後を受けて救援したが、2回4失点と崩れて作新学院に逆転負けを喫した。
このままではダメだと、この冬、球速アップを掲げてトレーニングに励んだ。「1日5食で、夜は白米を1キロ。自分でノルマを課しました」
身長167センチの体は一冬で体重を10キロ増えて70キロに。体のキレをなくさないために、メディシンボールで体全体を使うトレーニングも行った。
体が大きくなったことで、最速も7キロアップの143キロに。「真っすぐで空振りも取れるようになった」と自信をつかんだ。
もう一つ、武器がある。
牽制(けんせい)だ。
練習試合から試行を重ね、素早い牽制を習得。この日も走者が出たら3、4度続けて一塁に牽制を入れるなど、しつこく一塁へ投げた。「打者の集中力にも関わってくる」と山口。間をうまく使い、攻撃のリズムを狂わせた。
「この春、私だけでなくチーム全体でも、山口の成長を感じていると思う」と直井秀太監督。山口は「(昨年の)秋は昆野が引っ張ってくれた。この夏は昆野と自分で二枚看板と言われるまでになりたい」。(大坂尚子)
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