元横綱 北の富士勝昭さんしのぶ会 関係者やファンが別れ惜しむ

元横綱の北の富士さんは幕内で10回の優勝を果たし、引退後は親方として千代の富士と北勝海の2人の横綱を育てました。

NHKの大相撲中継の解説でも人気を博していましたが、去年の3月から病気の療養のため現場での出演を見送っていて、11月12日、82歳で亡くなりました。

しのぶ会は18日午後から東京 墨田区の八角部屋で開かれ、親族や、北の富士さんの弟子で元横綱 北勝海の八角理事長をはじめ、大相撲関係者、それにファンなど合わせておよそ2000人が参列しました。

八角理事長は、あいさつの中で「14歳のときに親方と一緒にプロペラ機に乗って上京したことを鮮明に覚えている。親方に出会えたこと、そのおかげで今の私がある。親方への恩返しは大相撲の伝統文化を守り、未来への伝承に全力を尽くし、親方と同じように相撲人生を全うすることだ」と涙をこらえながら思いを語りました。

そして大関 琴櫻などの現役力士や、親交のあった歌手の松山千春さんなどが祭壇に花をささげたほか、大相撲ファンも献花のために長い列をつくり、別れを惜しんでいました。

元横綱の北の富士勝昭さんは北海道旭川市出身。

出羽海部屋に入門し昭和32年の1月場所で初土俵を踏みました。

スピードのある攻めが最大の持ち味で、昭和41年の名古屋場所のあと大関に昇進し、その翌年には出羽海部屋から当時の九重親方とともに部屋を出て新たに九重部屋に移りました。

昭和45年の初場所で2場所連続の優勝を果たしたあと横綱に昇進し、同時に昇進したライバルの玉の海と何度も優勝争いを繰り広げて大相撲を盛り上げました。

その翌年、現役中に玉の海が急死したあとも横綱として角界を支え、合わせて10回の優勝を果たしました。

昭和49年の名古屋場所を最後に引退したあとは、九重親方として千代の富士と北勝海の2人の横綱を育て、定年前の平成10年に日本相撲協会を退職しました。

その後はNHK大相撲中継の解説者を務め、率直でユーモアをまじえた語り口で、時に厳しく時に温かく取組を解説し、人気を博しました。

去年3月からは病気の療養のため大相撲中継への出演を見送っていましたが、ことし7月の名古屋場所ではおよそ1年半ぶりにVTRで出演しました。

11月、体調を崩して都内の病院で治療を受けていましたが、11月12日、82歳で亡くなりました。

現役時代、北の富士さんと何度も対戦したことがある元関脇 高見山の渡辺大五郎さんは「若い時よくかわいがってもらった。親分みたいな存在。若い時はよくぶつかり稽古をやって恩返しと思って頑張った。親方になったあともよく相談できる相手で、長いつきあいなので『ありがとう』と言いたい」としのびました。

大関 琴櫻は祖父の元横綱 琴櫻が北の富士さんと同時期に活躍していたことから「先代の師匠と同じ時代をやってきた人で幼少期から入門しても声をかけてもらってもっと元気な姿を見ていたかった」と話しました。

そのうえで「解説もそうだが、北の富士さんにいい評価をしてもらうとうれしかったし、厳しいことばもあったがすべて自分の力にできるような、評価をしてもらった。今の番付があるのも、きっかけの一つなのかな」と感謝のことばを述べました。

そして、初場所は「綱とり」の場所になることを踏まえ「本当に結果で示していくしかない。いい報告をできることが供養になると思う。天国で先代と一緒に笑っていられるように相撲界を引っ張っていかないといけない」と話しました。

献花を行った一般の大相撲ファンからも、北の富士さんをしのぶ声が多く聞かれました。

このうち、小さい時から北の富士さんの解説を聞いていたという高校1年生の男子生徒は「長年、ありがとうございました という気持ちで来ました。僕が見ていた時はずっと解説は北の富士さんだったし、北の富士さんの解説が自然にあるものと思っていました。それが当たり前だったので、辛口な解説だとは感じなかったです」と話しました。

また、北の富士さんと同時に横綱に昇進した玉の海とのライバル関係が印象深いという70代の男性は「天国で玉の海さんと相撲を取っているのかな。にこやかに語り合っている姿を想像して手を合わせました。北の富士さんは着物の着こなしがかっこよくて男から見てもかっこいい人でした」としのびました。

60代の女性は「『富士さま』と呼んでいて横綱でも強かったし、解説も軽快でした。きょうは絶対に来ようと思っていて、『今までありがとうございました』と手を合わせました。解説の時は舞の海さんとの掛け合いが楽しく、相撲をもっと一生懸命見ようと思いました。相撲を楽しく見られる相撲界にとって大事な人でした」と別れを惜しんでいました。