練習メニューを選手に示す松本主務。選手と共に寮で生活を送り、練習がある日は、朝4時半に起床することもあるそうだ=立教大学陸上競技部提供

 来年1月2、3日に行われる第101回東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)。毎年、箱根駅伝で密着取材を実施している毎日新聞キャンパる編集部は今回、予選会を首位で突破し、全日本大学駅伝では初出場ながら7位でシード権を獲得するなど、今季急成長した立教大学に注目。チームを支えるスタッフ代表として、4年生の松本健生主務(21)に、大会への思いを語ってもらった。【法政大・園田恭佳(キャンパる編集部)】

「ここなら夢をかなえられる」

 松本さんは中学生の頃から駅伝の選手として活躍していたが、競技を続ける中で次第に周囲とのレベルの差を感じるようになっていったという。「大学で選手としてやっていくのは無理だろう」。選手への道は諦めざるを得なかったが、それでも箱根駅伝への夢を捨てることはできなかった。

 転機が訪れたのは大学への入学後。文学部への憧れから選んだ立教大だったが、進学後、創立150周年となる2024年に箱根駅伝に出場することを目標とする「立教箱根駅伝2024」事業の存在を知った。「ここでなら、箱根駅伝への夢をかなえられるのでは」。そう感じた松本さんは、マネジャーとして陸上競技部へ入部することを決意した。

学生コーチとして監督を補佐

 入部から約3年間マネジャーとして活動してきた松本さんだったが、同期のマネジャーとの話し合いを重ねる中で選手とのコミュニケーション力が評価され、24年度の主務に選任された。主務はマネジャー全体を束ねるリーダーとして、練習の準備や選手の体調管理などを行い、選手たちが競技に打ち込める環境を整える。また、監督の補助として選手への声掛けや指示出しをするなど、学生コーチ的なポジションも担っているという。

高林監督の単なる手伝い役ではなく、「学生コーチ」として練習する選手を見守る松本主務=立教大学陸上競技部提供

 選手と同じく寮で暮らす主務の朝は早い。特に忙しい土曜日は、午前6時から朝練を行うため、5時過ぎから給水や道具の準備を開始する。およそ1時間半にわたる朝練の後には一旦寮へ戻るも、2時間もたたないうちに再度出発。今度は午前練習を行う。午前中に授業がある選手に向けて午後にも同じ練習が行われるため、1日に寮と練習場所を何度も往復する。全てが終わるのは午後7時ごろだ。

 そんな多忙な毎日だが、その分やりがいも大きい。松本さんが特に思うのは、選手の成長を肌で感じられること。「自己ベストを更新したときは心からうれしくなる」と笑顔を見せた。

しっかりと築いた土台に自信

 「立教箱根駅伝2024」の目標より1年早く、23年に55年ぶりの箱根駅伝出場を果たした立教大は、今回で3年連続の出場となる。10月に行われた箱根駅伝予選会を過去最高成績の1位で突破。そして初出場となった11月開催の全日本大学駅伝では、並み居る強豪校、伝統校との勝負で健闘し、7位でシード権を獲得した。

 その急成長の背景には、4月に新たに就任した高林祐介監督の影響が大きい。高林監督の方針で、これまでスピード重視だった練習から、距離走や快調走など走行距離を伸ばす練習にシフトした。その成果か、ハーフマラソンの距離を走る予選会では、これまでペースが落ちがちだった15キロ以降も大幅にタイムが落ちることはなく、最後まで粘ることができたという。「段階的に走行距離を伸ばす練習を重ねたことで、土台をしっかりと築くことができた」と振り返る。

 また、高林監督のもとでサポート体制が強化されたことも、急成長の理由の一つだ。選手に毎日体重や体調のアンケートに答えてもらったり、睡眠のデータを取ったりするようになったことで、一人一人の状態をリアルタイムで可視化できるようになった。そういった管理も、選手の競技に対する意識の向上につながっていると感じている。

選手のやる気を引き出すため、「モチベーションを上げるような声掛け」を意識しているという松本主務=立教大学陸上競技部提供

もう一段のレベルアップを

 松本さんが考える今のチームの強みは、「ここぞというときの集中力の高さ」だ。狙った大会ではそれが遺憾なく発揮され、しっかりと結果を残すことができているという。

 その一方で、課題にも言及する。「今までと比べ、選手層の厚みはかなり増してきたが、良くも悪くも実力が拮抗(きっこう)しており、そこから抜け出す選手が少ない」というのが現状だと、松本さんは話す。「一皮むけてきた選手もいるが、全体的にもう一段階のレベルアップが必要」

 101回目の箱根駅伝まで1カ月を切った。松本さんにとって学生生活の集大成となるこの大会。「選手たちが何不自由なく出走できるよう、最後までサポートしていきたい」。そう大舞台への熱い思いを語った。

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