男子500メートルで優勝した新濱立也=YSアリーナ八戸で2024年12月13日、吉田航太撮影

スピードスケート全日本選手権(13日、青森・YSアリーナ八戸)

男子500メートル 新濱立也選手(高崎健康福祉大職)=1位、34秒65

 フィニッシュ直後、新濱立也選手は考えるような仕草を見せた。

 「100メートルだけを見れば、(調子が)戻ってきている段階に入ってきた。ただ、それ以降がうまくつながっていなかった。原因は何かなって」

 レース後の取材で、複雑な心境を明かした。「方向性は間違っていない」と納得いく部分もあったが、新たな課題が浮き彫りになったという。

 最初の100メートルを全体トップの9秒53と、スタートは良かった。しかし、第1カーブを曲がるところで手脚がスムーズに動かず失速。スピードに乗り切れず、34秒65でフィニッシュした。

 同じ北海道別海町出身で、2022年北京冬季オリンピックの500メートルで銅メダルを獲得した4歳下のライバル、森重航選手(オカモトグループ)を0秒32上回るタイムでの優勝だったが、「世界で見れば全く通用しない」とレース後の表情は硬かった。

 今年3月の練習中に転倒し、腰椎(ようつい)骨折の大けがをした。1カ月はほとんど体を動かせない生活が続き、その後も簡単なトレーニングばかり。「今までできていたことが全くできず、今までやってこなかったことをやらないといけない状態。不安だった」と振り返る。

 ただ、悪いことばかりではなかった。基礎練習を繰り返してきたことで、「今シーズンは安定感が生まれた」。復帰後のワールドカップ(W杯)2大会とも、この種目で表彰台に上がった。

 この日の第1カーブ後の失速も、「今までよりもスピードが乗っている中で、アジャストできなかった」。スタートが改善されたからこその課題だと前向きに捉えている。

 全日本選手権の次の大会は高速リンクで知られるカナダ・カルガリーで行われるW杯だ。目標は「(自身が出した33秒79の)日本記録うんぬんかんぬんというよりは、もう1回、33秒の領域に戻りたい」。そう口にできるほど、完全復活は近づいている。【森野俊】

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