来年1月2、3日に行われる、第101回東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)。毎年、箱根駅伝で密着取材を実施しているキャンパる編集部は今回、予選会を首位で突破し、全日本大学駅伝では初出場ながら7位でシード権を獲得するなど、今季急成長した立教大学に注目。チーム浮沈の鍵を握る高林祐介監督(37)に、大会への思いを語ってもらった。【昭和女子大・薄井千晴(キャンパる編集部)】
華々しい現役実績
2024年4月から立教大学陸上競技部の男子駅伝チームを率いているのが駒沢大学出身の高林監督だ。就任1年目ながら、男子駅伝チーム躍進の原動力となっている。
自身の競技生活について、「天国も地獄も味わった」と振り返る。駒沢大在学時は大学3大駅伝で7回も区間賞を獲得した華々しいキャリアを持つ。箱根駅伝では84回大会(08年)の総合優勝に貢献。主将として出場した86回大会(10年)はチームを2位に導き、前年13位に転落しシード権すら失った状態から成績を急回復させた。
実業団のトヨタ自動車に入ってからもニューイヤー駅伝で日本一に輝いたが、ケガなどでオリンピックへの出場は阻まれた。「良い思いはしたが、最後は悔いの残る引退になった」と当時を振り返る。
本人も驚く監督起用
競技を離れ6年ほどトヨタで働きつつ指導者を志したが、門戸は狭い。それでもチャレンジしたいと自身の恩師でもある駒沢大陸上競技部の大八木弘明総監督に相談し、22年に同大コーチに就任。2年間の指導経験を経て今春、立教大前監督の退任を受けて監督に抜てきされた。「うれしさより驚きが勝った」という。
急な監督就任だったが、チームの掌握につまずくことはなかった。今年のチームを漢字1文字で表すとすると、「信」だと高林監督は言う。関係性を作るところから始めた4月、トレーニング方法やメニューを変えたところ、最初は学生たちも疑心暗鬼になりながら従っていたという。そこから一つ一つ大会の目標をクリアする中で「自分の言うことを信じてくれるようになったし、選手自身が自分を信じて、自信を持てるようになった」と語る。
一人一人を大切に
学生との信頼関係を築く上で大切なことを聞いたところ、「まだ一年もたっていない状態で、信頼があると言い切れないが」と前置きした上で、「一人一人ちゃんと見ているようにすること」と答えた。「生活・練習含めてなるべく学生と同じ場に顔を出すようにしている。何も見ていない人があれこれ指示しても説得力がない。言葉の説得力を上げるためにもコミュニケーションは大切にしている」
その意識は練習メニューにも生かされている。以前までは画一的な練習が多く、ついていけない学生も出ていたという。それを危ぶんだ高林監督は、一人一人それぞれに合ったスピードと量で練習できるメニューに変えたのだ。学生個々がいかにより良い練習をしてもらうかも監督として意識しているという。
強くなるノウハウ注入
日本屈指の駅伝強豪校、駒沢大でのコーチ経験は現在のチーム運営に生かされているという。「駒沢には環境であったりスタッフであったり、強くなるための積み重ねのノウハウがあった。しかし立教にはまだ足りていない部分が多い。比較し改善しなければならないところのギャップを埋め、整備してあげることも私の役目」と語った。
監督とコーチの違いについて、一番は「責任の重み」だという。選手として競技力の向上、学生として社会に出てからの生活、どちらも指導者である自分自身の責任になること。「人の人生を預かるということの重みを監督として改めて感じている」という。
粘る走りでシード権を
3年連続30回目の出場となる箱根駅伝。チームが目指すのは10位以内、シード権の獲得だ。レース展開について、「往路が大事だと考えている。いわゆる流れ。前半良い形で進めれば復路もそのままいけると思っている。全日本大学駅伝や予選会で見せた“粘る走り”に持ち込みたい」と意気込みを語った。
監督として初挑戦となる箱根駅伝。個人としての夢は、「恩師である大八木総監督、その他多くいる駒沢大出身の指導者に肩を並べ、追い越せるようになること」だと語る。また「自分がそうしてもらったように、学生のいろんな目標や夢を4年間でかなえたり広げたりしてあげられるような指導者になれたら」と話した。今後のチーム像については、「自分がこういうのを作りたいというのはない。学生が自立して、立教らしさってこうだよね、と言われるようなチームになってほしい」と語った。
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