【鹿島-町田】鹿島に敗れ肩を落とす町田の選手たち=茨城県鹿嶋市の県立カシマサッカースタジアムで2024年12月8日、渡部直樹撮影

 サッカー・J1で史上初の「初昇格初優勝」の可能性を最終節まで残し、3位でシーズンを終えたFC町田ゼルビアの代名詞は「堅守」で、特徴はデータにもはっきりと表れる。第37節終了時点でJ1最少の31失点、無失点試合は最多の18試合。黒田剛監督や選手も、いかに失点を防ぐかに神経をとがらせていた。

 攻撃面では、パス総数がJ1で2番目に少なく、空中戦の勝利数は2番目に多い。高さとフィジカルの強さを生かし、ロングボールを使っての速攻やセットプレーを得意とした。

ゴールを決めて喜ぶ町田の呉世勲。前線のターゲットとして機能した=町田GIONスタジアムで2024年5月15日、藤井達也撮影

 昨季、J2の清水エスパルスで先発がわずか6試合にとどまっていた194センチの長身、呉世勲(オ・セフン)を前線のターゲットにし、Jリーグではほとんど見られなかったロングスローを多用。こぼれ球を拾っての2次、3次攻撃につなげた。

 青森山田高を全国屈指の強豪に育てた黒田監督が志向する「負けない」スタイルは、守備を重視して失点を防ぎ、少ない好機に波状攻撃を仕掛けることで効果的に得点にもつなげた。

 2018年にクラブの経営権を取得したIT企業「サイバーエージェント」の資金力を背景に大型補強も進めた。今季開幕前は日本代表経験を持つ昌子源や谷晃生、韓国代表経験のある羅相浩(ナ・サンホ)、コソボ代表のドレシェビッチらが加入。シーズン途中にも中山雄太、相馬勇紀と現役日本代表クラスの選手を次々と獲得した。

守備の中心としてプレーした町田の昌子源=ベスト電器スタジアムで2024年9月14日、平川義之撮影

 黒田監督は個々の選手の強みを生かし、呉世勲を輝かせるなど「再生工場」のような起用も見せた。

 リーグ開幕から5試合で4勝1分けとスタートダッシュに成功し、前半戦を首位で折り返した。9月から11月にかけては5試合連続で勝利から遠ざかり、黒田監督の就任2季目にして、チームで「最も避けるべきだ」と位置づけていた連敗も初めて喫した。

 優勝争いから脱落しかけたが、最終盤に修正力を見せた。11月9日のFC東京戦で、従来の4バックから3バックにシステムを変更。守備の安定に加えて攻撃にも厚みが増し、3―0で約2カ月ぶりのリーグ戦勝利を挙げた。主将の昌子は「FC東京戦で今季のベストゲームに近い試合ができた。この勝利がでかかった」と語る。

 開幕前に掲げた「5位以上」「勝ち点70以上」という目標に対し、3位、勝ち点66という結果を残した。

 一方で、ファウル数の多さ(第37節終了時で3番目に多い)や、PK獲得時にボールに水をかける行為(ボールが滑りやすくなり、相手GKが不利になる可能性がある)には、ネット交流サービス(SNS)上でチームを非難する投稿が相次いだ。ロングスローの際に使うタオルをピッチ脇に置くことは安全面の懸念から賛否の声が上がるなど、成績面以外でも常に注目を集めた。【高野裕士】

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