12月8日、エスコンフィールドHOKKAIDO(北海道・北広島市)で行われた「2024年度新入団選手ウエルカムイベント」。

 毎年恒例となった大渕隆スカウト部長による愛情たっぷり選手紹介の全文をご紹介します。

 背番号31 ドラフト1位 柴田獅子(れお)投手 右投左打 福岡大学附属大濠高校

 「一言で言えば、彼は野球の申し子なのかもしれません。投げてはバランスの良いフォームから繰り出す正確無比な投球はスケール感だけでなく美しささえ感じます。一方、打撃は荒々しく常に本塁打を狙う大胆なスイングは野性的かつ本能的です。

 慣れない守備も柔軟にこなす能力もあり、将来は先発ローテーションからショートのレギュラーまでが見えてきます。これまで『大谷二世』『二刀流』などと周囲からは騒がれてきましたが、我々にはむしろ『柴田獅子』という唯一無二の新しいタイプの活躍を期待してしまう選手です。

 ドラフト会議の入札2回目、テーブルで私が『おそらく、ソフトバンクとの一騎打ちになりますよ』と言うと、これまで『くじ引きは絶対にしない』と断言していた新庄剛志監督が突然『柴田くんなら、俺がいく』と立ち上がりました。結果はこの通りで、人生は人と人との縁だなと痛感します。

 縁としていえば、西鉄ライオンズ好きのおじいさんからいただいた名前は『獅子』と書いて『れお』。近い将来、背番号をかえる活躍をした暁には『レオ』と改名しておじいさんに見せるのもいいかもしれません。

 そして、獅子は伝説上の生き物です。どうぞ、ファイターズの伝説の選手となれるよう素晴らしい活躍を期待しています」


 背番号32 ドラフト2位 藤田琉生(りゅうせい)投手 左投左打 東海大学付属相模高校

 「今年の高校生投手ナンバーワンは、右は柴田投手なら左は藤田投手。我々はその2人を獲得することができました。とはいえ、藤田選手はこの春までは指名もされない可能性さえありました。

 それが、この6月フォームを少し変えてから急成長。激戦区神奈川を勝ち抜く原動力となり甲子園でも活躍、堂々と日本代表メンバーに選ばれるなど、まさにわずか3か月の令和のシンデレラボーイとなりました。

 身長198cmは外国人選手と並ぶリーグトップの身長です。驚くのは、その身体をしっかり操れる操作性と手先の器用な巧緻性(こうちせい)にあり、140キロ後半の速球を放りつつも、カーブ、スライダー、チェンジアップと多彩な変化球も制球できる能力は並大抵ではありません。

 聞けば、ご両親は実業団まで進んだバレーボール選手だということ。サラブレッドの血を引き続きましたね。本日は彼の小さいころからのキャッチボール相手を務め、その後親身にサポートしてくれたお兄さんもこちらにかけつけてくれました。

 家族の応援を糧に、そして、これからはここにいるファイターズファンの応援を糧に、ぜひ活躍してくれることを願っています」

 背番号35 ドラフト3位 浅利太門(たもん)投手 右投右打 明治大学

 「186cm、88kg、真上から投げ下ろす角度のある直球と落ちる球で三振が奪える、いわゆる本格派、ど真ん中の投手です。

 アマトップクラスの潜在能力だと誰もが評する一方で、ドラフトイヤーの今年は防御率3.21、イニング以上の四球を出すなど不調でした。実質、戦線から外れる屈辱も味わいました。

 それでも持ち前の研究熱心さでフォームを修正し、秋のシーズンには見事、四球を減らし防御率0.84、奪三振率は15.2とまっすぐで空振りをとれる本来のスケールが大きな投球を取り戻しました。

 特にドラフト指名された以降の試合では、気が楽になったのか6打者中4人を三振に取るなど、堂々としたその投球は来シーズンが非常に楽しみです。地道なトレーニングを通じて、休まず続けて出たこの結果。

 ドラフト前の調査書には彼らしい努力についての記載があったので紹介します。
『私にとってプロ野球は人生の目標であり希望、努力の象徴です』どうぞ、この気持ちで頑張ってください」


 背番号62 ドラフト4位 清水大暉(だいき)投手 右投右打 前橋商業高校

 「昭和の人気野球漫画「タッチ」のモデルとなった前橋商業高校からスケール感あふれる右の本格派投手がやってきました。今や190cm以上の投手は珍しくないのですが、体重96kg、骨格が太く肉付きの良いこの身体はすでにトップ選手と見間違うほどで、今年の高校生ナンバーワンのアスリート体形だと私は思います。ご覧の通り、ユニホーム姿が非常に映えています。

 もちろん投球はまだまだ未熟ではありますが、直球は最速149キロ、曲がりの良いカーブ、フォークも持っており、将来は先発ローテーションを担ってほしいと期待しています。

 心配なのは、あまりにもマイペースなところでしょうか。

 ドラフト直前、我々がブルペン投球を視察に行った時、すでに雨が降り出しているにも関わらず、ルーティーンに集中してばかりで、なかなか投げてくれない時には、我々と縁がなくなるのではないかとヒヤヒヤしました。

 とはいえ、マイペースさは投手には重要な武器になるはずです。自分の速度で着実に、まだエスコンフィールドに戻ってきてください」

 背番号54 ドラフト5位 山縣秀選手 右投右打 早稲田大学

 「清水投手同様、昭和の人気野球漫画『ドカベン』の殿馬一人がファイターズにやってきました。殿馬と言えばピアノの腕が超一流、その音楽センスで奇想天外、体操選手のような守備を見せるキャラクターです。

 昭和世代の我々には山縣選手の個性的でアクロバティックな守備はその殿馬を思い出させるのです。

 事実、山縣選手は小さいときに体操を習っていたそうです。ピアノにいたっては、殿馬はショパンの『別れの曲』を得意としていましたし、山縣選手も同じくショパンの幻想即興曲を人前で披露したことがありそうです。

 課題は打撃です。ドラフトを意識した春は打率.366のリーグ4位と奮闘しましたが秋は打率.238と失速していまいました。

 さあ、ここは殿馬の代名詞、『秘打・白鳥の湖』を参考にする時かもしれません。ちょっとふざけすぎましたね…。

 ということで、まるで殿馬の紹介となった観もありますが、母校の小宮山悟監督はオジー・スミスと評し、本人はロッテで活躍した小坂誠さんが目標とのこと。

 どちらにしても個性あふれるプレイヤーとして、プロ野球ファンを魅了してくれることを期待しています」


 背番号63 ドラフト6位 山城 航太郎投手 右投右打 法政大学

 「150キロのボリュームある直球と縦のスライダー、フォークボール、ひとつひとつの球はプロでも十分通用しますし、元野手だけに牽制やフィールディングも上手いと担当スカウトが早くから推薦していた選手です。

 彼は運の良い選手かもしれません。高校と大学の監督の間では『山城は野手でプロへいかせよう』という話になっていたはずなのですが、大学監督交代のどさくさに紛れて初練習でシレっと投手チームへいったのが投手山城の始まりでした。本当は投手がしたかったのだそうです。

 大学最終シーズン、それまで実績も経験もわずか。素材は良くても指名には決め手に欠けていました。そんなドラフト会議のわずか5日前。公式戦で初めて5回を投げ初勝利。ギリギリでアピールできたのです。

 そして、ドラフト当日にもありました。

 山城選手は支配下指名でなければ社会人に進む予定でした。ファイターズは支配下5人でドラフトを終了する予定でしたが、急遽もう1名必要ということになり、そこに滑り込んだのが山城くんでした。

 調査書には、こんなコメントもあります。『プロ野球はアマで活躍した人が活躍できる場ではなく、入ってからが勝負の面白い舞台』。さあプロに入ってしまいました。この面白い舞台で君らしく存分に活躍することを願っています」

 背番号121 育成ドラフト1位 川勝空人(そらと)投手 右投右打 生光学園高校

 「南は沖縄県、石垣島をルーツに持つ天然素材です。ご覧の通りの体格と風格、最速153キロのパワーピッチはライオンズ平良 海馬選手を思わせます。

 それもそのはずで、おじいさん、おばあさんは平良選手と同じ石垣島出身とのこと。高校時代、筋力トレーニングをしたことがないのに、この身体ですからプロの環境でしっかり鍛えたらと思うと、楽しみしかありません。

 夏の大会はサヨナラ負けで涙、ドラフト指名された時も号泣し、Xで世界中に配信されました。次の涙はこのエスコンフィールド胴上げ投手の時というのはどうでしょう。

 1軍には高校の先輩、武田久コーチが君を待っています。大らかで正直な性格。大きく自由に育ってほしいと思います」


 背番号122 育成ドラフト2位 澁谷 純希(じゅんき)投手 左投左打 北海道帯広農業高校

 「こちらは、北から北海道の帯広から天然素材です。おばあさんが元横綱・北勝海の八角親方と従兄弟とのこと。

 始めてみた時から骨格の太さや筋量の多さ、そして182cmでありながら足の大きさは31cmなど、身体の作りがちょっと違うなと強いインパクトがあった選手です。

 確かに球速や実績に突出したものはないのですが、わずか1カ月の間に20奪三振以上のゲームを2回達成するなど、何かみえない能力を持っている投手ではないかと放っておけませんでした。

 練習は1人黙々タイプ。静かですが燃える情熱を持った青年が、この北の大地で躍動しファンを熱くする姿を期待してやみません。

 以上が今年の新入団選手8名となります。昨年は野手が多くて、今年は投手が多い指名となりました。今年の身長は高く平均185.5cm、投手のみに限って187cmと数年後に投手王国の夢を見ています。そこへ堅守の遊撃手を加えた2024年ドラフトが『史上最高のディフェンスドラフトだった』と、そういう風に言えるような年になってほしいと思っています。

 どうか皆様からの彼らの成長を時に厳しく、時にやさしく見守っていただければいいと思っています。皆さんの応援を期待しています」

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