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 バレーボールの新しい国内リーグ「SVリーグ」がスタートし、連日熱戦が繰り広げられています。今夏のパリ・オリンピックではメダルに手が届きませんでしたが、近年は国際大会で表彰台に上がるなど、日本バレーは実力、人気ともにかつてない高まりを見せています。「世界最高峰」を掲げるSVリーグはこれまでと何が変わり、どこを目指すのかを解説します。【深野麟之介】

 Q SVリーグにはどんな意味が込められているの?

 A これまでの「Vリーグ」に冠した「S」には、Strong(強く)、Spread(広く)、Social(社会とつながる)の意味が込められています。

 2027年までにすべてのチームが運営法人を持つ「完全なプロ化」を掲げます。競技力はもちろん、収益を上げる事業力、健全に組織を運営するガバナンス力の三つの面で、30年までに「世界最高峰のリーグ」を目指すとしています。

 Q リーグが衣替えするのは初めてなのかな。

 A 国内リーグはこれまで、実業団を中心に成り立っていました。プロ化を目指す動きは以前からありましたが、実現しませんでした。

 1994年、「日本リーグ」を発展させて「Vリーグ」が誕生しました。誕生の3年前、サッカーのJリーグがスタートし、バレー界でもプロ化の機運が高まりましたが、実業団側が賛同せず、導入は見送られました。16年にもプロの「スーパーリーグ」を作る構想が打ち出されましたが、失敗に終わりました。

 Q SVリーグはこれまでと何が違うの?

SVリーグの開幕記者会見で意気込みを語る大阪ブルテオンの西田有志選手(背番号11)。高橋藍選手(背番号12)らが所属するサントリーと対戦する=東京都内で2024年9月30日、小林悠太撮影

 A V1からV3までの3部制だったVリーグを、トップリーグに当たるSVリーグと下部のVリーグの二つに再編しました。このうちSVリーグには、男子10チーム、女子14チームが所属しています。将来的なプロ化を見据え、チームにライセンスを交付する際、ホームアリーナの収容人数や売上高などの厳格な条件が設けられました。

 Q プレーの面で変化はあるのかな?

 A レギュラーシーズンの試合数は昨季までの男子36、女子33から、ともに44と大幅に増え、より多くの試合をファンが楽しめるようになりました。

 また、同時にコートに立てる外国人選手(アジア枠1人を除く)が、これまでの1人から2人になりました。特に男子は、パリ五輪で銀メダルに輝いたポーランド代表のアレクサンデル・シリフカ選手(サントリー)や、同じく米国代表で銅メダルのトリー・デファルコ選手(ジェイテクト愛知)ら世界のトップ選手が加入しました。これによりレベルの高い試合が繰り広げられ、日本選手の強化にもつながると期待されています。イタリア1部リーグ・セリエAの石川祐希選手ら海外所属選手がSVリーグに結集してほしい、との思いもあります。

 Q チーム名に企業名が入っていたり、いなかったりするね。

 A SVリーグの規約では、チーム名について「ホームタウンの地域名が含まれていること」と定められています。SVリーグが始まるのを機に、これまであった母体企業の名前を外したチームもあります。

 Vリーグ時代に「パンサーズ」の愛称でファンに親しまれた男子のパナソニックは、チーム名を「大阪ブルテオン(大阪B)」に変えました。男子の広島サンダーズ、女子の大阪マーヴェラスも、昨季まで付いていたJTの名前をなくし、女子はホームタウンの「大阪」を加えました。

 Q どんな狙いがあるのかな。

 A これまで以上に地域とのつながりを重視し、母体企業の力を借りずに発展していく姿勢を示すためです。

 大阪Bを運営するパナソニックスポーツの久保田剛社長は「大阪という地域名をチーム名の頭に付けるのは大きなこと。地域に根ざしてやっていくのが我々の一つのテーマだ」と強調しました。また「これまでは良くも悪くも企業チームとしての活動が中心だった」とも語り、ホームアリーナの整備による街の活性化や、バレー教室などの地域貢献活動を通じ、クラブとしての経営の自立化を図るとしています。

 Q 最近はバレーが人気だね。

【サントリー-大阪ブルテオン】試合を終え、握手する大阪ブルテオンの西田有志(右)とサントリーの高橋藍=東京体育館で2024年10月11日、前田梨里子撮影

 A パリ五輪で熱戦を繰り広げた男子が特に人気を集めています。10月に行われた男子のリーグ開幕戦は、サントリー―大阪Bというリーグ屈指の実力と人気を誇るチームが対戦しました。パリ五輪代表の高橋藍選手(サントリー)と西田有志選手(大阪B)らが直接対決したこともあり、観戦チケットはあっという間に売り切れ、先行抽選では倍率が100倍を超えた座席もありました。試合の模様はテレビの地上波でゴールデンタイムに生中継されました。また、多くの選手がSNS(ネット交流サービス)やファンサイトを使って積極的に発信しています。

 競技やチーム、選手への人気は移ろいやすいものです。バレーが長く親しまれるためにも、SVリーグが真に「世界最高峰のリーグ」に成長するのか、注目していきたいですね。

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