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8000m峰に魅せられた破天荒看護師の渡邊直子さん 雪崩もトイレトラブルも乗り越え日本女性初の14サミッターに
◆日本人女性初の快挙も「いつもと一緒」
ヒマラヤにあるシシャパンマ（8027メートル＝中国）。昨年は同山中で雪崩事故があったことなどで途中撤退したが、今年10月9日、2度目の挑戦で頂に立った。
シシャパンマ登頂を果たした渡邊直子さん（中央）と、一緒に登ったシェルパたち＝10月9日午前8時35分（渡邊直子さん提供）
登頂の瞬間、こぼれた涙は達成感より安堵（あんど）だったという。「やっとという気持ち」。コロナ禍や雪崩に阻まれ、13座を登頂以降、2年足踏みした。最初にチョ・オユーを登頂してから18年。日本人女性初の14サミッターになった感慨を問うと、「いつもと一緒」とあっけらかん。「8000メートル峰は生活の一部。これからも登り続けるので」と話した。◆雪崩から九死に一生、同じ山で4人が命を落とし…
富士山（3776メートル）の倍以上もの高所は年中雪と氷に覆われ、酸素濃度は地表の3分の1。これまで多くの登山家が命を落とし「デスゾーン」とも呼ばれる場所に、渡邊さんは20代半ばから通い続ける。
転機は2019年。知人から「8000メートル峰7座って日本人女性最多じゃない？」と言われた。「なら14座を狙おう」。スポンサーを募り、クラウドファンディングで資金を集め、2022年には一気に6座登頂した。 最後のシシャパンマは、管轄する中国がゼロコロナ政策のために長く閉山。やっと許可が下りた昨年10月7日、途中で雪崩に巻き込まれ、渡邊さんは雪に埋もれたが、同行していたシェルパ（ヒマラヤ登山の案内人）に掘り出され、九死に一生を得た。「ラッキーだった。一瞬のことで、夢の中のように現実味がなかった」。別の日、同山に登っていた4人が雪崩で命を落としていた。 途中撤退も含め、8000メートル峰に登ったのは計30回。うち、同じ山を含めのべ20座の登頂に成功している。生死のはざまを何度も経験したが、シェルパとの交流やベースキャンプでの生活が、最大の魅力なのだという。 
日本人女性初の14サミッターとなった渡邊直子さん
「登頂が目的というより、シェルパたちとワイワイ過ごすのが楽しい。日本は細かくて息が詰まる。ヒマラヤはそんな自分をリセットする、休日のような場所」◆「直子さんと登りたい」というメッセージが増えた
大自然の中で自分を解放する、そんな体験を日本で疲れた大人や子どもたちに提供するのが夢だ。「そのためには、まず私のことを知ってもらわないと」。14サミッターを狙ったのは、登山家の勲章が欲しかったのではない。夢をかなえる「信用証明」を得たかった。 その夢は近づきつつある。昨年末、「渡邊直子とヒマラヤトレッキング」を初企画し、計9人が参加した。この年末年始も開催予定で、子ども4人が参加するという。「直子さんと一緒に登りたいというメッセージをもらうことが増えた。そこに14座を達成した意味があると思う」。記録を達成した渡邊さんは、自らの頂に向かって登り続ける。14サミッター 標高8000メートル以上の高峰は世界に14座あり、その全てがネパール、パキスタン、中国・チベット地方にまたがるヒマラヤ内にある。最高峰はエベレスト（8848㍍）。14座全てに登頂した登山家は「14サミッター」と呼ばれる。
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