(5日、春季兵庫県高校野球大会決勝 社6―3須磨翔風)
五回を終わって0―3。それでも社の選手たちに焦りはなかった。グラウンド整備中に円陣を組み、思いを口々に発した。
「今日は俺が打つから、俺に回せ」
戸田陸翔(りくと)は、締めるように言った。チームでも元気のいいキャラクター。「試合序盤はチームが暗かったから、プラスの発言をした」。ここから流れが変わった。
六回は1番からの攻撃。単打3本でつなぎ、2死満塁で6番の戸田に回ってきた。制球の良い須磨翔風の2年生右腕に対し、「ファーストストライクを振っていこう」と1ボールからの2球目にバットを出し、左前適時打にした。
この1本をきっかけに、敵失と押し出し四球もあって3―3の同点に。七回にも1番からの攻撃で2死満塁と攻め、またも戸田に回ってきた。
「前の打席よりは余裕があった」と2球目を中前に運び、勝ち越し適時打にした。相手バッテリーのミスで、さらに2点を追加。そのまま逃げ切り、16年ぶり3度目の優勝を手にした。
春季県大会5試合のうち、初戦をのぞいた4試合が逆転勝ち。その裏には「劣勢でも、まず1点、という単純な考え方をしない」と山本巧監督が話す意識づけがあった。
1点を取れば、走者が出て2点目のチャンスも残るケースになる、という思考だ。「点差があっても追いつける。みんなが心からそう思えているのも強さだと思う」と戸田。
昨秋は近畿地区大会1回戦で敗れ、甲子園の連続出場は3季で止まった。再び甲子園へ――。夏に弾みをつける優勝になった。(大坂尚子)
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