神奈川県高校野球春季大会(県高野連主催、朝日新聞社など後援)の決勝が4日、横浜スタジアムであり、武相が粘る東海大相模を振り切り、1982年以来42年ぶりの優勝を果たした。両校は5月18日から群馬県で開かれる関東大会に出場する。
1点リードの九回裏2死。敬遠で満塁とし、次打者を迎えた武相の三上煌貴(こうき)投手(2年)は、ナインに白い歯をのぞかせた。「自分を落ち着かせるためだった」
何度も汗をぬぐい外角にフォークボールを投じると、打球は二塁へのゴロに。アウトになったことを確認し、今度は満面の笑みで右手を高々と上げた。
武相のスローガンは「雑草の逆襲」。何度踏まれても立ち上がり、強豪校に勝利するという意味を込めている。
決勝の相手は、優勝候補の一角で桐光学園や横浜を破って勝ち進んできた東海大相模。「ここで負けたらやっぱりかと思われる。そうはさせたくない」
この日のマウンドは、思うように出場機会が得られない中でようやくつかんだチャンスだった。2度の本塁打を浴びたが後続を断つなど、東海大相模の猛攻に141球の粘りの投球を見せた。
優勝しても、8失点に反省は尽きない。「中盤で変化球が浮いてしまった。関東大会までしっかり投げ込みたい」と気を引き締めている。(中嶋周平)
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5点差を追う八回、2死二、三塁のチャンス。東海大相模の和田勇騎選手(3年)は、打席で右足を勢いよく上げるルーティンをこなした。3打席連続フライアウトで「調子はよくなかったが、気合が入っていた」。
2球目を左翼に運び、二塁に滑り込んだ。走者2人を返し、破顔。さらに、相手の失策の間に本塁に激走し、1点差に詰め寄った。ベンチの部員らとハイタッチし、「よっしゃあ!」とほえた。
昨秋に県大会の準決勝で敗退して以降、毎夜ライバル校のエースを思い浮かべて「納得のいくまでひたすら」バットを振った成果だった。
九回、満塁の好機にも打順が回ってきた。しかし、打球は二塁手の前に転がり、試合終了。「あそこで1本が出なくて本当に悔しい」
先輩からは、「甲子園に行けよ!」と思いを託されている。「自分には気持ちしかない。打力を磨きつつ、声や気合でチームを盛り上げたい」(手代木慶)
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42年ぶりの優勝に武相のスタンドが沸いた。過去の優勝の瞬間にも立ち会ったという卒業生の上矢晃さん(82)=横浜市南区=は「うれしい。きょうは喫茶店で友達にコーヒーをおごった」。
今春は初戦から決勝まで全試合を観戦した。「(決勝は)リードしていたのに追いかけられたってことはまだまだ。本番は夏」。後輩に辛口のエールを送った。(稲葉有紗)
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