明治神宮野球大会の高校の部は23日、神宮球場で準決勝があり、横浜(関東・神奈川)が東洋大姫路(近畿・兵庫)を延長十一回タイブレークの末に3―1で破り、準優勝した第38回大会(2007年)以来、17年ぶりに決勝進出した。
延長十回裏、横浜は1死満塁のサヨナラのピンチで奇策に打って出た。左翼手と交代させた選手が向かった先は二塁ベース付近。「内野5人シフト」を敷いて1点を防ぎにいった。
がら空きの左翼を見つめていたのが、先発から六回に外野に移り、延長に入って再びマウンドに戻ってきた左腕・奥村頼人だ。「一番欲しいのはリスクの少ない三振。絶対に打たれるわけにはいかない」。心でそうつぶやいて気持ちを奮い立たせた。
東洋大姫路の打席は、右打者のエース阪下漣。背番号「1」同士の対決で奥村が選んだのは真っ向勝負だった。自らの球威なら、スイングの大きな阪下には引っ張られないという自信があった。ベンチがシフトを敷いたのもその見立てからだ。切れのあるボールで3球で追い込み、最後は144キロの力のこもった直球でバットに空を切らせた。
後続も二ゴロに打ち取ると、歓喜しながらベンチへ。窮地をしのいだ直後、十一回の攻撃では自ら適時打を放つなど2点を勝ち越した。その裏は無死満塁のピンチを背負ったが無失点で切り抜けてみせた。
好投手の阪下を擁して強打で勝ち上がってきた東洋大姫路と、世代屈指の戦力と評される横浜との一戦。外野席まで観客が入り、約1万5000人が注目した。「もう体力的にも精神的にも限界だった。最後は技術でなく気持ちです」。横浜の奥村が振り返った言葉が激闘を物語っていた。
神奈川を1位で突破し、関東大会を制して勝ち上がった横浜はこれで秋14連勝。筒香嘉智(DeNA)を擁した2007年以来17年ぶりの決勝進出となった。「15連勝しか見ていない」と村田浩明監督。狙うは「平成の怪物」と呼ばれた剛腕・松坂大輔がエースとして活躍した1997年以来の頂点だ。【長宗拓弥】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。