大の里(手前)を攻める隆の勝=福岡国際センターで2024年11月20日、平川義之撮影

大相撲九州場所11日目(20日・福岡国際センター)

○隆の勝(押し出し)大の里●

 考え抜いた作戦でなく「とっさです」と明かした。平幕の隆の勝は、新大関・大の里の持ち味を抜群の反応で封じ、2場所ぶりに白星を2桁まで積み上げた。

 立ち合いですぐに体を左にずらした。「(大の里に)右を差されて一気に持っていかれるのが嫌だった」と隆の勝。狙い通りに食い止めると、間髪入れずに得意とする右からののど輪でぐいぐいと押し込んで相手のバランスを崩し、一気に押し出した。

 「稽古(けいこ)場は強い」と言われてきたが、本場所になると、緊張から力を出せないことが多かった。

 転換点は新型コロナウイルス感染拡大防止のため無観客で行われた2020年の春場所だ。12勝を挙げ初の三賞を獲得すると、徐々に出足が戻ってきた観客にも慣れてきて「お客さんがいる中でも力を発揮できるようになってきた」。

 今では「(相手の)顔つきで焦っているとか感じ取れたりする」と土俵上での冷静な観察眼も身についた。

 今年の名古屋場所では優勝決定戦で横綱・照ノ富士に敗れ、あと一歩で賜杯を逃したが、八角理事長(元横綱・北勝海)は「名古屋場所の経験もあるから自信があるんじゃない」と分析する。

 最高位が大関だった貴景勝(現・湊川親方)が秋場所中に引退し、部屋頭になった自覚も兼ね備えた隆の勝が、初優勝に向けて琴桜、豊昇龍の両大関と並走する。【藤田健志】

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