(20日、明治神宮野球大会・高校の部1回戦 東洋大姫路10―0聖光学院)

 聖光学院(福島)の正捕手、仁平大智(にへいたいち)には憧れる「兄」がいる。

 阪神タイガースの湯浅京己だ。

 仁平の8学年上の兄、勇汰さんは同校野球部の卒業生。子どもの頃、試合の応援に行くと、試合の合間によく兄とじゃれあっている人がいた。それが、兄の親友である湯浅だった。

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 当時の湯浅は腰の成長痛で、入学直後から2年秋までマネジャーだった。「記録員をやっていて、どんな人なんだろうと興味を持った」と仁平。その疑問を兄にぶつけると、「ケガであの立場にいるけど、すごいやつなんだよ」と返ってきた。復帰後の登板で力のある直球を見て、兄の言葉を理解した。

 そのすごさを、より実感したのは自身が高校に入学してからだ。

 日々のミーティングで、斎藤智也監督ら指導者から卒業生の話がよく出てきた。その中で特に印象に残ったのが、湯浅の話だった。

 選手としてプレーができない時も、できる範囲のことをやっていたこと。復帰後も自分でトレーニングを積んで追い込んでいたこと。「僕だったら『もういいや』って諦めてしまう。でも湯浅さんはそうじゃなかった」

 湯浅は最後の夏の甲子園ではメンバーから漏れ、打撃投手としてチームを支えた。卒業後は独立リーグからプロに入り、2022年にはセ・リーグ最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得。23年春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では日の丸を背負って世界一に貢献した。

 いつも気さくに接してくれるもう1人の兄のような湯浅の活躍に刺激を受けた。

 高校時代から努力を惜しまなかった湯浅のようになりたい、もっとできるはず。仁平は自分を奮い立たせてきた。後ろ向きになりそうな時は、中学時代に兄を経由して湯浅からプレゼントされた木製バットで素振りをした。

 ただ、東北王者として臨んだ神宮大会は、近畿王者の東洋大姫路(兵庫)に5回コールド負け。3投手をうまくリードできず、10安打を浴びる完敗だった。

 「力のなさを痛感した。もっと投手と信頼関係を築いて、来年の春には対等に渡りあえるくらいになりたい」

 まだまだできるはず――。一冬で一回りも二回りも成長することを誓った。(大坂尚子)

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