港町と海岸線を駆け抜ける神戸マラソンが11月17日に開かれます。阪神・淡路大震災の復興支援への感謝を込め、2011年に始められた大会はコロナ禍による中断を挟み、今年12回目を迎えます。看護師の見嶋眞紀子さん(29)はマラソン初心者として15年に初参加し、昨年の大会は女子4位に駆け上がった注目のランナー。急成長の理由や走る魅力を聞きました。
――初マラソンは5時間台だったそうですね。
9年前、2015年のことです。20歳の記念に何かやってみたいと思い、初めてマラソンに挑戦しました。当時は本当に遅くて、1キロ7分ペースで10キロ走れるかどうか分からない。大会前も15キロを走って満足していました。大会では苦しくて、途中歩いたりしました。マラソンがどんなものか体験できるだけで十分、完走できればいいという気持ちでした。その時は今の自己ベスト、2時間43分台で走るなんて想像もしていませんでした。
――中学・高校では陸上部でした。
長距離を走っていました。その時は明石市内の大会で優勝したり、兵庫県大会に出場したりしましたが、近畿大会や全国大会に行くほどの選手ではありませんでした。高校では同級生より少し早く3年生の夏で引退して、看護師を目指し勉強していました。看護学校時代は実習や勉強の合間にリフレッシュするため、近所を走っていたくらい。高校の部活はやらされるスポーツという印象が強かったので、そういうランニングはもうしたくない気持ちが強かったんです。
――それが、どうして速くなったのですか。
最初のフルマラソンを走って1年後ぐらいでした。自宅近くのジムに入って、1人でランニングマシンで走っていたら、他のランナーさんに「一緒に外で走らない?」と声を掛けられました。ジムを出て、外で走って、帰ってきてお風呂に入って、ストレッチして解散、というグループがあって、そこに誘ってもらったんです。速いタイムを目指して走っている方々で、刺激を受けました。
コツコツやっていくと、少しずつタイムがよくなっていきました。2回目のフルマラソンは確か4時間20分ぐらい。次は3時間59分、3時間50分、3時間45分…。自分の中では4時間台から3時間台に変わったのが大きかった。「サブフォー」と言いますが、4から3の数字が見えた時がすごくうれしかった。
グループでは一緒に走っている人たちとワイワイ話しながら、ちょっと頑張って背中を追いかけるような感じでした。どれだけ自分の限界を超えられるか、タイムを縮められるかにハマって、楽しみになっていったんです。
苦しい練習を一つ一つ乗り越えていった時の達成感や、今まで見たことのない景色を見ることができるようになったことが楽しくなってきました。これからどんな冒険があるのだろうという気持ちで練習しています。
――タイムが伸びず、仕事や勉強が忙しくなって、走ることから離れる人も少なくないです。
急性期病院で働いていた頃は不規則な勤務が続いていたので、思うように練習できず、故障した時もありました。その時、仲間が声をかけてくれ、たまに練習に行くと喜んでくれたのがモチベーションの維持につながりました。患者さんとランニングの話をすることも度々ありました。話すきっかけになり、ランニングの話を聞くのを楽しみにしている患者さんもいたので、頑張ろうという気持ちになりました。
高校の部活の経験も生きました。あの頃の厳しい練習はもうしたくないと思っていたんですけど、ランニングの基礎をたくさん教えてもらえたから、何年も本気で陸上をやっていなくても、こうやって走れる。あの時代があったから今の自分がいると思います。
――今も看護師として忙しいですね。
整形外科クリニックで看護師をしています。看護師を目指したのも、陸上でけがをして、悩んでいる人に寄り添いたいと思ったことがきっかけでした。夜7時半まで仕事をして、帰宅するのは8時過ぎになるので、そこから走ることはできなくなってしまった。朝4時20分に起きて、4時半から走り出し、5時40分に朝の練習を終えて、朝食をとって出勤しています。昼休憩が2時間半ぐらいあるので、その間、1時間ほど走っています。
――見嶋さんにとって走る魅力は何ですか。
さまざまな経験をして思ったのは、走ることプラスα、それを含めて楽しい、ということです。例えば友だちとのおしゃべりとか、走り終わった後においしい食事をするために頑張るとか。パン屋さんを目指して走る「パンラン」や、長い距離を走りながら途中でコンビニに寄ってアイスを食べるなど、ピクニック気分でマラソンを楽しむ「マラニック」もはやっています。私もランニングって楽しい、というところから始まって、楽しいけれど少し物足りなくなって、タイムを狙っていこうという気持ちになった。最初の入り口は「楽しい」から入ってもらえればと思います。
――4位だった昨年の神戸マラソンを振り返ってください。
食事や体重管理、練習メニューをこれまで以上に考えて、今できる最大のパフォーマンスをするためにはどうしたらいいのかを突き詰めて、当日を迎えることができたと思います。一昨年のレースは風が強かったので、それを覚悟して1年間準備していたのですが、コンディションも非常に良いレースでした。気付いたら30キロ地点に来ていた。その間、普段一緒に走っているランナーが自分の後ろに付いて、結構ワイワイ言ったり、全然知らないランナーも応援してくれたり、自分一人で出した記録ではないなと思います。この4年間インスタグラムなどで発信していたこともあって、たくさん声をかけてもらった。頑張るエネルギーになりました。
――神戸マラソンのコースはどうですか。
行って折り返す、とても分かりやすいコースで、自分の中で作戦が立てやすい。すれ違いのランナーもたくさん見かけることができ、頑張れって声をかけてくれる。明石海峡を見ながら走れるのも魅力の一つです。今年も出場予定で、狙っているレースの一つです。その時のコンディションや天候に左右されるのですが、舞子ぐらいまでは余裕を持って、折り返してから30キロまでにどれだけペースアップできるかですね。
――今後の夢は何ですか。
もっといいタイムを目指すとともに、初心者の方や、サブフォー(4時間切り)を目指しているランナーの後押しができたら。今回の「ジョグスク」もその一つです。いろんなレベルの方と関わることはすごく勉強になります。タイムを狙っている方や、モチベーションを上げたい人にとって、自分の経験がプッシュになればいいなと思っています。(聞き手・渋谷正章)
略歴 看護師の見嶋眞紀子さん(29)
みしま・まきこ 1995年生まれ、兵庫県明石市出身。サウルスジャパン所属。明石城西高2年の時、県高校駅伝で8位。高校卒業後は看護師として働きながら競技を続け、昨年11月の神戸マラソンで自己新の2時間43分23秒で女子4位入賞を果たした。神戸マラソンの関連事業で、ランニング初心者向けの教室「ジョグスク」の講師を務める。
大会概要
日時 11月17日(日)午前9時スタート
参加人数 マラソン2万人、リレーラン150組300人
制限時間 7時間
主催 兵庫県、神戸市、一般財団法人兵庫陸上競技協会
共催 朝日新聞社など
特別協賛 シスメックス株式会社
問い合わせ 神戸市総合コールセンター(0570・083・330)
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