パリ五輪でレスリング男子フリースタイル57キロ級金メダルの樋口黎(ミキハウス)が12月26日から、米国・リーハイ大の練習にコーチ兼選手として参加する。期間は全米大学体育協会(NCAA)選手権が行われる2025年3月末まで。28歳は新たな挑戦に「米国のレスリングを肌で感じて自分のレスリングに生かし、若い子たちにも還元していけたら。実りある3カ月にしたい」と意気込む。

子ども向けのレスリングイベントで技を教える樋口黎(右)

◆東京五輪予選で失格…引退を勧められたが

 リーハイ大はNCAA1部の強豪校。7年前に満員の観客で会場が埋まった同選手権を現地で観戦し「ずっと行きたいと思っていた」と米国留学を熱望していた。今夏の五輪後に関係者を通じてオファーがあり、快諾した。妻・優貴さん(29)と、パリには行けなかった今年2月生まれの長女・凪(なぎ)ちゃんも同行する。英語は勉強中で、車の運転には不安を感じるというものの、指導では「報酬をもらう以上は、全力できっちり教える」と頼もしい。  4歳で始めた競技への愛着は強い。2021年東京五輪の予選では、苦手な減量で失敗し、わずか50グラムの体重超過で失格。その後のプレーオフに敗れて自国開催の大舞台を逃した。指導を受ける湯元健一コーチに引退を勧められたが、やめようとは思わなかった。「五輪で金メダルを取れる」と信じて競技中心の生活を続け、技術の研究も怠らなかった。

◆「学生からたくさん吸収したい」

 リベンジを果たし、ようやく上った表彰台のてっぺん。達成感に満たされると同時に「世界のレベルを底上げしていきたい。僕の技術や情熱をしっかり評価してもらえるところで働きたい」と次なる目標を抱いた。

子ども向けのレスリングイベントで技を披露する樋口黎=13日、東京都内で

 選手としては2026年の愛知・名古屋アジア大会での金メダルに狙いを定める。「まだ(金メダルを)取っていない大会なので。(2028年の)ロサンゼルス五輪まで続けたいと思うかは、分からない」と集大成に向けて歩む。  指導者としての第一歩も糧にする。「僕は技術を学生に教え、逆に学生からたくさんのことを吸収して帰ってきたい」。ベテランの域に差しかかってなお衰えぬ熱意と向上心が、五輪王者の原動力だ。(山内晴信、写真も) 

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