サッカー・J1で数々のタイトルを獲得してきた鹿島アントラーズ、横浜F・マリノスという名門とともにJ2降格がなかった3クラブの一つ、サガン鳥栖が19日、4試合を残して18位以下が確定し、初のJ2降格が決まった。身の丈に合わない経営で基盤が揺らぎ、健全化を図る中で成績低迷に陥った。
前身の鳥栖フューチャーズを受け継ぐ形で1997年2月に誕生した鳥栖は99年にJ2に参戦し、2011年にJ2で2位となってJ1に初昇格した。
ホームタウンの佐賀県鳥栖市は人口約7万4000人で、J1では最少規模。潤沢な予算は組めず、毎年のように主力選手を引き抜かれながらも、育成組織の強化や大卒新人の獲得などで戦力を整え、地方の小規模クラブながらJ1で存在感を示してきた。
最高成績は昇格初年度の12年と14年の5位。その後は中位、下位を行き来する中、18年夏には元スペイン代表FWフェルナンドトーレス選手を獲得するなど大型補強に打って出た。
Jリーグが発表している「チーム人件費」は昇格初年度はJ1の18クラブ中17位の約6億円(J1平均約14億円)だったが、18年度は6位の約27億円(平均約23億円)まで膨らんだ。
一方で大型スポンサーが離れ、スポンサー収入は18年度の約23億円から19年度は約8億円と激減し、足元が揺らいだ。18年度からは4期連続で赤字となり、経営規模の縮小を余儀なくされた。
近年、Jリーグはチーム人件費のうち「トップチーム人件費」を抽出して数値を公表しているが、23年度の鳥栖は18クラブのうちアルビレックス新潟に次いで少ない17位の約10億円で、J1平均約23億円の半分以下だった。
22、23年度は黒字経営を達成した。債務超過は解消していないが、経営改善が少しずつ進む。だが、人件費の抑制は成績にも徐々に影響を及ぼし、21年は7位、22年は11位、23年は14位と順位を下げてきた。
ホームの観客動員も新型コロナウイルスの感染拡大前は平均1万5000人に達していたが、今季は1万人に届かない。多くのクラブが「コロナ前」と同水準またはそれ以上の集客となっているのとは対象的だ。
J113季目の今季は序盤から低迷し、4月には強化担当の小林祐三スポーツダイレクターが退任した。その後も苦しい試合が続き、前節の第33節終了時点で7勝5分け21敗で最下位の20位。7月14日の第23節から前節までクラブワーストの11戦勝ちなしとなり、この間は5連敗もあった。
本来はてこ入れが必要な夏の移籍期間には、MF河原創選手やMF長沼洋一選手ら、今季20試合以上に出ていた主力級の5選手が他チームに移籍した。
8月に川井健太前監督が解任された。失点の多い試合が多い中、新たに就任した木谷公亮監督は「自陣で守ることも当然だけど、自分たちからボールを奪いに行く、そういうプレーをしないといけない」と強調し、システム変更に加え、課題だった球際やクロス対応などの練習メニューを変え、改善を試みたが、好転していない。
第33節終了時点で、1試合平均の被シュート数12・9本はJ1で2番目に多く、63失点はリーグワーストと、相手に押される試合展開となっていることが数字にも表れている。
残った主力の一人、DF山崎浩介選手は10月11日の取材に「監督、メンバーが入れ替わり、すぐに結果に結びつけるのは難しい。一人一人がもがいてきたが、勝利がつかめていない」と苦しい胸のうちを明かしていた。
さらに「危機感や焦りがないといえばうそになる。落ち着いていないかといえばそうでもない。いろんな感情を持っていることをプラスに捉え、エネルギーに変えていく」と話していたが、無念の降格決定となった。【丹下友紀子】
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