女子テニスの国際大会「東レ・パンパシフィック・オープン」(東レPPO)の予選が19日に東京・有明コロシアムなどで開幕する。本戦には元世界ランキング1位の大坂なおみ選手や今年のウィンブルドン選手権を制したバルボラ・クレイチコバ選手(チェコ)らが出場する国内最高峰の大会に、世界ランキング375位の山口芽生(めい)選手が予選ワイルドカード(主催者推薦出場権)で出場する。世界的にまだ名が知れていない25歳が強豪相手に下克上を成し遂げるか。
昨年までなら東レPPOに出場できるランキングではないが、山口選手は「東レドリーム」をつかんだ。東レPPOの主催者は今年、次世代育成の観点から門戸を開け、公認大会として日本最古の歴史を持つ「毎日テニス選手権」一般の部のシングルス優勝者に予選ワイルドカードを付与した。山口選手は8月4日に有明コロシアムで行われたその決勝で、ランキング上位の伊藤あおい選手(20)に勝利。夢に見た東レPPOの切符を手にした。
5歳からテニスを始めた。今まで続けられたのは「家族の支えが大きい」と言う。埼玉県上尾市のテニスクラブに通う当時小学生の山口選手の練習を応援するため、祖父母の後藤由典さん、悦さんは、東京都板橋区の自宅を引き払い、コートの脇に家を建てた。「よく双眼鏡で私の練習を見ていました」と振り返る。
プロになるときも、初めて優勝したときも、傍らで応援し続けてきた由典さんは2020年11月に他界。「おじいちゃんに東レでいい試合を見せたい」と秘めた思いを語る。
身長157センチ。背の高いパワーヒッターが増えるなか、プロとして決して大きくない。「前に出て相手に圧力をかけるのが私のテニス」と言うようにベースラインで打ち合うことで、大柄な選手に対抗できるパワーとスピードを身につけた。「パワーで押していないと決まらない」ドロップショットを得意と自負しており、身長差を苦にしていない。
東レPPOは「4大大会と並ぶ憧れの大会」と言うが、出場だけが目標ではない。「強い相手しかいないことは分かっている。でも、予選を突破して、世界のトップ選手と試合がしたい」。かつて伊達公子さんや杉山愛さんらが活躍した東レPPOの舞台に新たな“芽”が吹く。【杉本修作】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。