サッカーJ1初参戦で優勝争いをするFC町田ゼルビアが、サンフレッチェ広島との首位攻防戦に敗れた直後に迎えた5日の川崎フロンターレ戦。もう後がないと思わせる重苦しい雰囲気を、中島裕希がキックオフ早々に取っ払った。チーム最年長の40歳が窮地で意地を見せる劇的な展開に、どよめき交じりの大歓声が響いた。

町田-川崎 前半、シュートを放つ町田・中島=5日、Gスタで

 前半13分、左サイドを抜け出した藤本から中央でパスを受け、「迷いなく振り抜いた」と右足で先制点をたたき込んだ。気迫に満ちた表情で真っ先にベンチに向かい、歓喜の輪でもみくちゃにされた。J1の歴代4位となる年長記録でのゴールは、年齢を感じさせない豪快な一撃だった。  試合はその後に守備が崩れて1-4で今季初の逆転負け。「町田が勝つためにできることを精いっぱいやってきた」と振り返る中島の表情は浮かなかったが、ひたむきな姿勢はこれまでも若手に刺激を与えてきた。

町田―川崎 前半、ゴールを決め藤本(手前)と抱き合って喜ぶ町田・中島

 首位を快走したシーズン前半は出番に恵まれなかった。それでもプロ通算600試合以上に出場した実績がある大ベテランは、控え組の練習でサボらずボールを追い回した。23歳の林が「文句を言わず黙々とやっていた」と敬意を払うように、競争心を背中であおった。衰えを感じさせるどころか、疲労がたまりやすい夏場の終わりに調子を上げ、9月以降に先発出場を重ねている。

広島-町田 後半、ベンチで指示を出す町田・黒田監督

 過酷な戦いを強いられる最終盤での優勝争い。初昇格の町田ならなおさら、豊富な経験値は頼もしい武器になる。ある試合後、中島はこう漏らした。「もうできないっすよ。めちゃくちゃきつかったですもん」。若々しく日焼けした顔には、余裕が漂っていた。(加藤健太) 

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