ヤクルト―広島(2日・神宮)
日本ではヤクルト一筋。1724試合目となる自らの引退試合を前に「最後まで貫いてきたことは何ですか」と問われるとミスタースワローズ・青木宣親は答えた。「幸せになることですかね。ヒットを打つことで幸せになる。勝ってみんなで喜ぶと幸せになる。それが一番」。その言葉通り、多幸感あふれる一戦だった。
「1番・中堅」で先発出場。第1打席こそ凡退したが、1点リードで迎えた二回の第2打席が圧巻。2死一塁から、日米通算2729安打目となる左前打で出塁した。青木らしい流し打ちに本人は「最後の試合で1本ヒットが出てホッとしてます」とコメント。ヤクルト打線もつながり一挙4点。さらに六回の第4打席には、右翼線二塁打で2730安打目を刻んだ。
試合前の打撃練習でのこと。青木はいつものように、細かにスイングの調整を続けていた。どうやったらヒットが打てるか、どうやったら打球に角度がついて、本塁打が打てるか。そんな作業だ。「職業病みたいなもの。気づいたら微調整していた。勝手に染みついてんだな」。プロ21年目、42歳になった安打製造機は苦笑いしていたが、その成果が出た。
この試合では、ヤクルトの選手たちだけでなく、ボールボーイ、チアリーダーも青木の背番号「23」を身につけてグラウンドに登場。始球式の大役は、青木の長男が務めた。捕手役としてボールを受けた父は、息子と抱き合って涙した。
観客にも、背番号「23」と記された黄緑色のユニホーム形のボードが配布された。青木が打席に入ると、ヤクルトファンのみならず、左翼側の広島ファンの多くもボードを掲げ、青木の新たな門出を祝した。日米通算で2483試合目。勝ち負けを超えたこの光景を幸せと言わずして、何と言うだろうか。【岸本悠】
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