開幕まで2年を切った愛知・名古屋アジア大会で、日本選手団の現地サポート拠点が愛知県内に設けられるか注目される。海外開催の五輪で最多となる金メダル20個を獲得したパリ五輪では、選手村の近くに設けられ、日本代表の最終調整を後押しした。実施した日本スポーツ振興センター(JSC)は2年後の計画を未定としているが、自国開催だけに支援態勢の充実が求められそうだ。(山内晴信)

◆東京の機能を「そのまま持ってくる」施設を整備

 パリではスポーツ庁からの受託事業として、JSCが約13億円をかけて現地のスポーツ施設を再整備した。東京都北区のハイパフォーマンススポーツセンター(HPSC)の機能を「そのまま持ってくる」がコンセプト。事前に各競技団体から要望を聞き、疲労回復効果がある交代浴の浴槽やサウナ室、戦略を練る動作解析室、心理スタッフが常駐する相談室などを備えた。

ハイパフォーマンススポーツセンターのの一部である味の素ナショナルトレーニングセンター。パリ五輪では、機能を「そのまま持ってくる」施設を現地に整備した=東京都北区で(資料写真)

 柔道やレスリング、ブレイキンの練習場もあり、施設スタッフは「選手村や公式練習の会場は他国の選手もいるが、ここは日本勢だけで場所を独占できる。最終調整をライバルに見られないのは大きい」とメリットを挙げた。

◆レスリング金・樋口黎は減量の仕上げに活用

 レスリング男子フリースタイル57キロ級で金メダルの樋口黎(ミキハウス)は減量の仕上げにサウナを活用。「試合前日は10分入って、出てを2時間繰り返した。試合で高いパフォーマンスを出せたと思う」。もともと実力がありながら、過酷な減量に不安を抱えていた。熱波を浴びて体感温度も調整できる環境は、体重制限のある競技の選手には役立ったという。

パリ五輪レスリングの男子フリー57㌔級で優勝し、金メダルを手に笑顔の樋口黎。現地サポート拠点を調整に生かした選手の一人=8月9日、パリで

 施設には日本から連れてきた調理師と栄養士がいる食堂も。納豆や梅干しなど和食中心のメニューが並ぶ。これも体重調整には効果的で、金メダル8個と躍進したレスリング選手の間では「他の国際大会と違い、日本と同じように調整できる」と好評だった。

2026年アジア競技大会まで2年。パロマ瑞穂スポーツパーク内に建設中の陸上競技場。後方はラグビー場=18日、名古屋市瑞穂区で、本社ヘリ「わかづる」から

 現地サポート拠点は2010年の広州アジア大会(中国)でテストされ、12年ロンドン五輪以降、冬季五輪やパラリンピックなどで実施して知見を重ねてきた。自国開催だった21年東京五輪も選手村近くに整備した実績がある。愛知・名古屋アジア大会について、JSCは「スポーツ庁で検討されると思われる」と答えるにとどめている。 

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