◆キャプテン昌子源「それでも勝ちます。その一言です」
大一番に向けた心境を語るFC町田ゼルビアの黒田剛監督(加藤健太撮影)
秋風がやんで暑さが戻った26日、町田の練習場は大一番を控えて張り詰めた空気が漂っていた。非公開練習を終えて引き揚げる主将の昌子源は10人以上の記者に囲まれ、珍しく口が重かった。「広島はタレントも多いし、勝負どころの強さも持っている。それでも(僕らが)勝ちます。その一言です」。そう強い口調で訴え、1分足らずで自ら対応を切り上げた。 その後、取材に応じた黒田監督も普段とは明らかに様子が違った。冗談を交えつつも表情は硬く、隙を見せまいとする姿勢がいつも以上に際立った。戦術がメディアを通じて漏れることに神経をとがらせ、「彼ら(広島)が怖いと思うことをやっていく。詳しくは言えない」と意識的に多くを語らなかった。◆リーグ最少失点vs最多得点
町田―札幌 前半、ボールに反応する町田・GK谷=9月21日、町田GIONスタジアムで(布藤哲矢撮影)
最大で12差あった両チームは勝ち点59で並び、猛烈に巻き返してきた広島が得失点差で上回って首位に立つ。今季は残り7試合となり、直接対決は今回が最後。負けた方は自力優勝の可能性が消滅する。矛と盾のように正反対の特長を持つ両者が、シーズン終盤で満を持して激突する。 堅守が強みの町田は失点数がリーグ最少の22を誇る。直近2試合も危なげなく無失点で抑え、夏場にほころびを見せた守備陣は、日本代表のGK谷晃生らを中心に安定感を取り戻した。 一方の広島は得点数が61でリーグ最多。リスクを冒しながらも攻撃に人数をかけ、無得点に終わったのは31試合でヴィッセル神戸戦の1試合のみ。前節の横浜F・マリノス戦はJ1で今季リーグ最多タイの6得点を挙げ、勢いに拍車がかかった。特に7月に新加入したドイツ出身のFWトルガイ・アルスランは7試合で7ゴールと無双状態が続く。町田―札幌 前半、ゴール前で競り合う選手たち。中央は町田・GK谷=9月21日、町田GIONスタジアムで(布藤哲矢撮影)
広島はシュート数もリーグ最多だが、ゴールにつながった決定率は7位タイにとどまる。対する町田は1位タイの確率をキープし、決めきる力では上回る。◆昌子源主将「ホームの負けをやり返す」
主将の昌子が「ホームの負けをやり返す」と口調を強めたように、町田はリベンジに燃える。前回対戦は第2節から4連勝中と勢いに乗っていながらホームで1―2で完敗。開幕から6試合目で今季初黒星を喫した相手でもあった。練習後に取材に応じるFC町田ゼルビアの昌子源主将(加藤健太撮影)
指揮官が「一枚上手だった」と認めるほど力の差を見せつけられたが、反抗心こそが町田の躍進を支えてきた要因でもある。2年目を迎えた黒田体制では1シーズンで同じ相手に2度負ける「シーズンダブル」を食らっていない。今季15戦で1敗しかしていないアウェーでの強さも追い風にできるか。賛否両論を巻き起こしながらトップを走り続けてきた今シーズンの主役が、ここで引き下がるわけにはいかない。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。