直視するのがはばかられるくらいの怒られっぷりだった。サッカー日本代表に初選出されたJ1町田のDF望月ヘンリー海輝(ひろき)が、ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の2戦を終えてチームに戻った12日。話を聞こうと向かったグラウンドで目にしたのは、身長192センチの体を縮ませる22歳の姿だった。  強い日差しの下、気色ばむ黒田剛監督と立ったまま向かい合っていた。集まった記者も固まるほどの張り詰めた空気の中、少なくとも3分は続いたか。会話を終えて取材に対応した望月は上の空だった。

◆「参加しただけで終わってほしくなかった」

取材に応じる町田の望月=12日、東京都町田市で(加藤健太撮影)

 指揮官が許せなかったのは、代表帰りの望月に意識の高まりを感じなかったからだ。世界で戦ってきた姿勢を見せつけ、周りに刺激を与えるのがプロではないか―。そんな思いから「参加しただけで終わってほしくなかった」と真意を明かした。  期待されて選ばれながら、今回の2戦では出番なしに終わった。7カ月ぶりに代表復帰した同僚の中山も、出場機会に恵まれなかった。それでも「悔しさをチームでぶつけたい」「代表に参加して貪欲に何を獲得するか」と反骨心を言葉に表し、何よりのお手本となる心構えを示したのとは対照的だった。

◆日本を救う日がきっと来る

 性格が「優しすぎる」と言われる望月の言動に、遠慮がちだと思わされることがよくある。勝負の世界では自分を主役に引き上げる強引さも必要だ。黒田監督との会話の中身は「頑張れよってことでした」と意地もあって明かさなかったが、愛情ゆえの叱責(しっせき)をきっかけに、見返してやると決心したのだろう。表情からそう伝わった。

日本代表での練習を終え、長谷部コーチ(左)と握手する望月。中央は長友=2日、千葉市内で(浅井慶撮影)

 名誉挽回のチャンスはすぐに訪れた。14日のJ1福岡戦。前半33分、負傷した昌子に代わって本職ではないセンターバックで急きょピッチに立った。優勝争いの真っただ中で主将が離脱するチームの危機を冷静な対処で救い、黒田監督に「落ちついて対応してくれた」とたたえられた。  国士舘大から今季加入したルーキーは激流の日々にもまれている。飛び抜けた身体能力を備える大型サイドバックが、日本を救う日がきっと来るだろう。日の丸を背負った望月が一皮むけると信じて、今は懸命にしがみつく姿を見つめたい。(加藤健太) 

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