試合開始前から、ユニホームが違う2人の口元が緩んだ。15日に東京・秩父宮ラグビー場であったパシフィック・ネーションズカップ(PNC)準決勝、日本―サモア戦。サモア出身の叔父とおいっ子が対戦する珍しい場面があった。
「自分の生まれた国と戦う。そのチームの中に叔父がいる。家族にとっても、自分にとっても特別な瞬間だった」
日本代表で日の丸を背負ったWTBマロ・ツイタマ選手(28)=静岡ブルーレヴズ=は、自身の出身地であるサモアと対戦した感想をそう明かした。サモアの先発メンバーには、尊敬する叔父のCTBアラパティ・レイウア選手(35)がいたからだ。
日本のツイタマ選手は前半、右サイドでボールを受けると軽快なステップで前進してゴールラインに迫った。その直後にサモアの反則があり、日本の認定トライにつながった。試合は日本が49―27で快勝し、おいっ子に軍配が上がった。
「まさか自分がマロと試合をすることになるとは、全く想像していなかった。お互いにニヤニヤしながら試合が始まった」。そう振り返ったレイウア選手も、特別な瞬間をかみ締めながらプレーした。レイウア選手は7人兄弟の末っ子。ツイタマ選手は姉の息子にあたるおいっ子だ。
叔父がおいっ子にタックル
レイウア選手は試合序盤、日本の先制トライにつながる場面でおいっ子にタックルして懸命に食い止めようとした。「タックルされないように、なるべくマロから遠いところにいるように逃げ回っていた。マロは速いので、こちらもつかまえることができなかった」と冗談交じりで振り返った。今回の日本戦でサモア代表38キャップ目。2019年ワールドカップ(W杯)日本大会にも出場した実績豊富なベテランだ。23年には静岡でツイタマ選手と共にプレーした経験もある。
ツイタマ選手は19年に来日し、静岡の前身であるヤマハ発動機に入団。スピードと強さを兼ね備え、23~24年シーズンのリーグワンではトライ王とベストフィフティーンに輝いた。今年8月に日本代表の資格を取得し、25日のPNC1次リーグのカナダ戦で代表デビューを飾ったばかりだった。
「(静岡)ブルーレヴズに入る前から叔父のプレーは見ていた。非常にスキルのレベルが高い、試合の中で優れた才能を発揮する選手。ずっと尊敬していた」。ツイタマ選手は叔父への憧れをそう語った。
日本とサモアは15、19、23年と3大会連続でW杯の1次リーグで対戦している。次回のW杯での「家族対決」への思いを2人に尋ねると、ツイタマ選手が叔父の隣でいたずらっぽく笑った。
「年を取り過ぎているよ!」
27年W杯オーストラリア大会を39歳で迎えるレイウア選手は、おいっ子の「いじり」に笑いながらこう答えた。
「妻が『ずっとプレーしなさい』と言うならば、(次のW杯も)プレーするよ」
3年後、世界一を決める大舞台で「叔父VSおいっ子」は実現するか。【高野裕士】
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