押し出しで御嶽海(奥)を降す大の里=東京・両国国技館で2024年9月15日、和田大典撮影

大相撲秋場所8日目(15日、東京・両国国技館)

○大の里(押し出し)御嶽海●

 安易に勝ちにいくことを自重し、最後は自らの持ち味である左おっつけを利かせた。名古屋場所初日に敗れた御嶽海から白星を挙げ、大の里は勝負のかかる場所を全勝ターン。ここに来て、勝利の形も身に付けつつある。

 立ち合い、もろ手突きから左を差して右で抱えて出たが、御嶽海が踏みとどまる。大の里は右で相手の首を巻いて引きに転じようとした。呼び込んでしまう場面だったが、思い直したように腰を落として左でおっつけ、一気に土俵際へ押し込んだ。こうなると、御嶽海も残せない。大関経験者を相手に、瞬時の判断が光った。

 手を相手の肘にあてがって絞り上げるおっつけは、師匠の二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)も得意にしていた。相手の差し手を封じることが目的だが、二所ノ関親方は大の里のおっつけを「攻撃力、守備力両方が生かされている」と評する。勝負の決め手となったこの日の取り口に、「相手が嫌がるのが一番いい」とたたえた。

 隆の勝、平戸海に続き、先場所苦杯をなめた相手を退けた。同じ轍(てつ)を踏まない修正力も、大の里の勢いを支えている。

 大関取りが、日に日に現実味を帯びてきた。大の里は「一日一番、集中するだけ」とこの日も最近おなじみのフレーズを口にしたが、「この1週間が大事になる」とも。大関陣とぶつかる終盤戦の重みは十分承知している。

 土俵下で見守った高田川審判部長(元関脇・安芸乃島)は「(場所を)折り返して、どういう相撲を取ってくれるか楽しみ」。関係者、ファンの思いも同じだろう。【岩壁峻】

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