初参戦のサッカーJ1で2位につけるFC町田ゼルビアは14日、敵地で9位アビスパ福岡と対戦する。前節で首位から陥落した町田にとっては優勝戦線に残るための正念場。YBCルヴァン・カップでの大敗から立ち直り、課題の攻撃面で殻を破れるか。相性の良い「アビスパキラー」のベテランFWがキーマンになりそうだ。(加藤健太)

優勝争いに向けて「勝ちたい気持ちで上回ることが絶対」と語るFC町田ゼルビアの黒田剛監督=12日、東京都町田市で

◆堅守瓦解?ルヴァン杯で屈辱的0-5

 ワールドカップ(W杯)アジア最終予選との兼ね合いでリーグ戦が2週間中断していた4日。町田はルヴァン杯の準々決勝第1戦で、屈辱的な大敗を喫した。各国代表に選ばれた主力5人が不在とはいえ、苦手のアルビレックス新潟に0―5で敗北。堅守で無失点にこだわる黒田剛監督の体制下ではこれまで3失点がワーストで、5失点は初めてだった。  点差だけでなく、失点の仕方もショッキングだった。前半16分、右サイドから簡単にクロスを上げられ、中央でフリーの選手に悠然と先制点を決められた。クロスからどんぴしゃで決められる形は、8月31日のJ1浦和レッズ戦から2試合連続。それまでクロスを直接たたき込まれる失点はなかっただけに、持ち味である堅守の瓦解(がかい)さえ印象づける負け方だった。

FC町田ゼルビアはルヴァン杯のアルビレックス新潟戦で黒田体制下でワーストの5失点を喫した=4日、デンカビッグスワンスタジアムで(ⓒFCMZ提供)

 9月8日の第2戦では2―0の無失点で勝ったものの、2戦合計で2―5。ルヴァン杯はベスト8で敗退した。

◆「クロスを上げる選手への対応が…」

 DF中山雄太は日本代表の戦いを終えてチームに合流した12日に取材に応じ、「クロスを上げる選手へのアプローチがここ数試合は薄すぎる」と指摘した。残り9試合と優勝争いの佳境を迎えるリーグ戦に向け、気がかりな課題だ。

「無失点にこだわりたい」と意気込むFC町田ゼルビアの中山雄太=12日、東京都町田市で

 中断前だった8月31日の浦和戦は引き分けに終わり、5月から守ってきた首位の座をサンフレッチェ広島に得失点差で明け渡した。再開後は守備の立て直しに加え、勝利をもぎ取るためのゴールを割る力も求められる。

◆福岡の堅守崩せるか…チーム最年長FWは不敵に笑う

 その力量を確かめるのに鉄壁の福岡は格好の相手だろう。6月の前回対戦では堅い守備に阻まれ、ホームで今季初めて得点を奪えず0―0でドロー。選手が口をそろえて「優勝するにはこういう試合で1点を取り切らなければ」と悔しがった一戦だった。再び立ちはだかる福岡の壁を打ち破ることができれば、大きな自信を得られるはずだ。  真価を問われる攻撃陣はチームトップの9得点のFW藤尾翔太を出場停止で欠く。そこで期待がかかるのが、チーム最年長の40歳のFW中島裕希だ。リーグ戦の対福岡では通算23試合でハットトリックを含む11得点を挙げた実績があり、アビスパキラーとして名をはせる。

アビスパ福岡戦を前に今季初得点を決め、調子を上げているFC町田ゼルビアの中島裕希=8日、町田GIONスタジアムで(ⓒFCMZ提供)

 相性の良さだけでなく、黒田監督が「今が一番コンディションが良い」と驚きを交えて話すように、得意の福岡戦を前に調子を上げてきた。9月8日のルヴァン杯・新潟戦では今季初得点となる先制ゴールを決め、試合後はリーグ戦を見据え「アビスパは相性が良いので」と不敵に笑ってみせた。

◆ルヴァン杯と天皇杯の敗退をリーグ戦につなげられるか

 ルヴァン杯と天皇杯を逃し、今季狙えるタイトルはリーグ戦のみとなった。12日に取材に応じた黒田監督は「ルヴァン杯と天皇杯の敗退が、リーグ戦の残り9試合のためにあったと思えるように、正解にしていかなければいけない」と強調。悲劇的な事象を力に変え、Jリーグ史上初となる初昇格チームの優勝に全精力を傾ける決意を示した。 

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