プロ野球・ヤクルト

◯ヤクルト7―2巨人●(13日・神宮)

 本塁打王争いでトップを走るヤクルトの村上宗隆が一回、バックスクリーン直撃の26号3ランを放った。球場近くの球団事務所で涙を流してから、およそ5時間半後の先制かつ決勝アーチだった。

 1死一、二塁。甘いストレートをとらえた。感触は完璧だったのだろう。バットを持ったまま、バッターボックスの中にとどまり、打球の行方を見届けると走り出した。「先制のチャンスだったので積極的に打ちにいった。先制できて良かった」と喜んだ。

 「村神様」と称される、日本を代表する長距離打者にとっても、特別な一発だった。この日、「ミスタースワローズ」として尊敬を集めてきた42歳の青木宣親が正午から球団事務所で記者会見し、現役引退を表明した。青木は宮崎出身。隣県の熊本出身の村上は新人の頃から、面倒見の良い青木に気にかけてもらってきた。

 会見のさなか、山田哲人とともに、花束の贈呈役として登場した村上は思い出と感謝を口にしながら涙を流した。「僕が若くて、ミスだったり、人間的にもダメだったりした時に、愛をもって、たくさんしかっていただいた。人として愛をもって接してくれた」。あまりの泣きっぷりに、青木がもらい泣きし、「やめてくれよ」と冗談交じりに抗議したほどだった。

 試合後のヒーローインタビューでも村上は「青木さんが引退会見をした特別な日。何とか勝ちたいと思っていた。特別な人です」と語った。

 その後、満員のファンに向けて言葉を続けた。「今後、僕のホームランで、ヤクルトの勝利で、生きる勇気と希望を与えられるように頑張りたい」。青木の誠実さは、確かに後輩に受け継がれている。【岸本悠】

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