5日のパリ・パラリンピック卓球女子シングルス(知的障害)決勝の第4ゲーム。相手のサーブミスで金メダルが決まると、和田なつきは両腕を突き上げた。「信じられない」。前回覇者に3―1の逆転勝ちだった。
和田の世界を広げてくれたのが卓球だった。
- きっかけはダイエット 卓球を始めた私がパラリンピックに出るまで
小学3年の時にいじめに遭い、学校に行けなくなった。家にこもりがちで、中学2年の頃の体重は今より17キロほど重かった。「このまま家にいてもダメだ」と母に連れられ、通い始めた障害者スポーツ施設で卓球と出会った。検査で知的障害があると分かったのは、この頃だ。
最初は体が重くて思うように動けないから守るばかりだった。「その中でどう点をとるかを考えていた」。相手を見ながら、攻める局面と守る局面で戦い方を変えられる器用さの原点はそこにある。
試合で勝てるようになると自信がつき、のめり込んだ。昨年、国内大会で初優勝すると同年10月のアジアパラ大会も制覇。初めてのパラリンピック出場権を手にした。
体幹を鍛え、足を細かく動かす。パリに向けて時間を割いた練習の成果が実ったのが決勝だ。スピンをかけてラリーに持ち込んでくる相手に、粘り強く返球。相手はいらだち、ミスを重ねた。
「じゃんけんすら負けたくない」というほどの負けず嫌い。頂点に立った後も、「(相手は)世界選手権も取っている。まだ私はトップじゃない」。シングルスで日本勢初の快挙も、21歳にとっては通過点でしかないのかもしれない。(佐藤祐生、藤野隆晃)
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