【詳しくはこちら】競泳“全盲のエース” 木村敬一が金メダル 50m自由形
フィニッシュした直後に激戦を制したことを知った33歳の全盲のエース。
パリのアリーナに右腕を高々と突き上げると水面にたたきつけ、何度も全身を上下させながら喜びを表現していました。
「本当にすべてがうまくいったレースだった」
その完璧なレース運びを実現させた要因の1つが「大会前の調整」です。
ただ、それは、「副産物」と言ってもいいものでした。
木村選手の「本職」、最も得意とするのはバタフライです。
パリ大会の1年半ほど前からは特にバタフライでの泳ぎで上半身が立たないような「水中姿勢の安定」をテーマに取り組んできました。
これが泳法が異なる今回の種目の自由形でも生きたといいます。
中でも今回の50メートルという最も短い距離のレースでは、25~6秒で決着がつくため少しのフォームの乱れが順位に大きく影響しますが、この日の木村選手は安定した姿勢で泳ぎ切り自己ベスト更新につなげました。
さらに「予選から決勝に向けた調整力の高さ」も大きな勝因と言えます。
大会直前の事前合宿で万全の状態を作り上げて「いい記録が出せるだろう」と臨んだ本番当日。
ただ、無観客だった東京大会から一変し大勢の観客が集まる会場に、5大会目のパラリンピックの木村選手でさえ「思ったよりも緊張していた」といいます。
このため「落ち着こうと思っていたら落ち着きすぎてしまった」ということで、予選では自己ベストより0秒69遅い26秒74のタイム。
全体の4位でした。
その予選終了直後からおよそ9時間後の決勝に向けて特に立て直したのは「心」でした。
「ここまで完璧にやってきたので勝てないわけがない」
東京大会のあとからコーチを務める古賀大樹さんにもそうハッパをかけられ、一気にスイッチが入りました。
「リミッターを外した」と好スタートから飛び出しテンポよく腕を回転させてスピードに乗っていきました。
もつれたレースは残り数メートル。
視覚障害のクラスでタッチのタイミングを知らせる「タッパー」を務める古賀コーチが、あうんの呼吸でそのタイミングを伝えると速度を緩めることなく最高のタイミングでタッチしフィニッシュしました。
「自己ベストに向けてしっかりやりきることができた」と胸を張ったパラリンピック通算9個目のメダルで2個目の金メダル獲得。
そこで改めて際だったのは、大舞台を知り尽くした木村選手ならではの体と心を整える力でした。
次の種目は前回大会で金メダルを獲得した「本職」の100メートルバタフライです。
6日後のレースへ、どんな調整力を発揮するのか、待ち遠しい日々が続きます。
【NHKニュース】パリパラリンピック2024
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