日本代表の公開合宿でプレーを確認する島川慎一
◆年齢の壁をトレーニング量で打破
競技歴は25年。今でこそ、ほぼプロとしてプレーする選手が大半を占めるようになったが、働きながら貯金を切り崩して遠征費などを捻出していた時代を知る。競技レベルを上げる海外挑戦や、競技に専念でき、環境面の支援も受けられるアスリート雇用の先駆けとなり、常に車いすラグビー界をけん引してきた。強烈なタックルが光るストイックな攻撃スタイルは、いばらの道を歩む中で築き上げられた。 3年前の東京パラでは、同じハイポインターで主将の池透暢(ゆきのぶ=日興アセットマネジメント)とエース池崎大輔(三菱商事)の「イケイケコンビ」に続く3番手の存在に甘んじた。2大会連続の銅メダルに、「金メダルに向けて練習は十分だと思っていたが、それでも足りなかった」。悔しくて、1週間後には練習を再開していた。東京パラリンピック車いすラグビー3位決定戦 オーストラリアに勝利し銅メダル獲得を決め、写真に収まる(左から)池、島川、池崎
「(パフォーマンスが)年齢とともに落ちていくなら、トレーニング量を増やすだけ」。関節などへの負荷を考え、筋力トレーニングは低重量で回数を増やす内容に変え、走り込みにも注力。苦手意識のあったパスの精度も磨き、試合中に効果的に使えるようになった。「パスの距離も伸びたし、20メートル走も自己最高記録をたたき出せた」と胸を張る。◆代表チームは「今が一番強い」
パリ・パラのメンバーは、東京パラから1人入れ替わっただけ。この3年で練度は増し、直前の海外遠征でも優勝を重ねてきた。島川も「長いこと代表チームを見てきて、今が一番強い」と太鼓判を押す。個々のレベルが上がり、誰を入れ替えてもその強さを維持できるのがチームの武器だ。もちろん、最も存在感を放つのは自分。22歳で伸び盛りの橋本勝也(日興アセットマネジメント)までも「ライバル」と表現し、負けるつもりはさらさらない。パリ・パラリンピック代表発表会見で意気込みを語る島川慎一
何度出場しても、パラリンピックは緊張するという。そんなとき、島川は鏡を見つめ、自分に言い聞かせる。「俺が世界最強で、かっこいい」。コート上を誰よりも駆け回り、はね返され続けた金メダル獲得を今度こそ成し遂げる。(兼村優希)島川慎一(しまかわ・しんいち) 49歳、熊本県出身。パリ大会の車いすラグビー1次リーグで、日本はドイツ、米国、カナダと同組。9月1日に準決勝、2日に決勝が行われる。
◇ <連載:マイ・ウェイ! パリ・パラリンピック>パリ・パラリンピックは8月28日に幕を開ける。十人十色の道のりでトレーニングを積んできたパラアスリートたち。初出場選手から複数出場を重ねるベテランまで、それぞれの歩みをたどり、本番への覚悟に迫る。(兼村優希)
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