今年も阪神甲子園球場を舞台に、多くの人たちを魅了した球児たち。甲子園滞在中は、どんな生活をし、どんな練習をして過ごしているのだろう。茨城代表の霞ケ浦を担当した記者(38)が、「体験入部」してみた。

 5年ぶり3度目の夏の甲子園出場となった霞ケ浦が現地入りしたのは8月2日。翌3日から、選手たちは練習を始めていた。

 チーム「霞ケ浦」のメンバーは、高橋祐二監督(65)やベンチ入り選手20人のほか、サポートとして帯同する3年生部員9人やマネジャーを含め総勢38人だ。部員は70人ほどいるが、1、2年生を中心に半数は茨城に残してきた。

 期間中、チームは大阪市内にある茨城代表の定宿を拠点に、大会本部が割り当てた練習会場まで貸し切りバスで移動する。

 記者は入社16年目。中高でバスケットボール部に所属していたが、野球経験は体育の授業くらいしかない。

 それでも「高橋監督、野球がしたいです」とお願いしたところ、快く、打撃練習の際の外野守備に参加させてくれた。選手たちは普段のポジションに関係なく、左翼、中堅、右翼に各3人ずつが並び、飛んでくる打球を交代で捕球する。

 借りたグラブを左手にはめ、右翼の列に並んだ。グラブの軟らかい感触がどこか懐かしく、見上げると青い空。気持ちが自然と高まってくる。

 次の瞬間、ガキンと音を立て、打球が正面に飛んできた。守備位置の手前でゴロになり、慣れていなくても捕球できた。

 続く2球目はガキーンと音がして、気が付けば打球は頭上を越していった。その後も、なかなかノーバウンドで捕球できない。運動不足がたたった身体で全力疾走すると、息はすぐに切れる。

 見かねた右翼手の矢田貝優選手(3年)がコツを教えてくれた。「ボールが当たった時のバットの向きや打球音で、飛ぶ方向や距離を予想して動き始めるといいですよ」

 ガキーンと高い音は、バットの芯でボールを捉えた時に出る音らしい。

 まずは打者のスイングに注目したが、そもそもバットに当たった一瞬を見極めるのも難しい。矢田貝選手、そのアドバイスはとても高度なのでは……。

 20分間で10球ほど参加させてもらったが、一つもアウトにできなかった。

 外野守備の奥深さと、守備位置に関係なく当たり前のように捕球する選手たちのレベルの高さを、身にしみて理解した夏だった。(古庄暢)

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