ほとんどの日で33度超え “酷暑”が続く近年
ことしも甲子園球場のある兵庫県では大会期間中、連日「猛暑日」や「真夏日」となりました。
気象庁によりますと、神戸市の2020年までの30年間の8月の最高気温の平年値は32.2度。
ことしは試合が行われた日の最高気温はほとんどの日で33度を超えました。
今月14日には体温並みの36.9度を観測。
大会期間中、兵庫県にはずっと「熱中症警戒アラート」が発表され続けました。
取材をしていても甲子園球場特有の浜風が吹かなければ蒸し暑く、まるで“サウナ”のよう。
銀傘に覆われていないスタンドには強い日ざしが照りつけ、汗が噴き出るほどでした。
高野連が新たな対策 大きくかじを切った大会
こうした危険な暑さから選手などを守るにはどのような対策を取ればよいのか…。
今大会から高野連(日本高校野球連盟)などが運営面で大きくかじを切りました。
「2部制」の実施です。
近年、熱中症の症状を訴える選手が相次ぐなどして、健康管理を不安視する声が多く出ています。
高野連は開幕から3日間、気温が上がる時間帯を避けて午前と夕方に分けて試合を行うことにしました。
この間に行うのは3試合のみで、初日は開会式後の午前10時から1試合、午後4時から2試合。
2日目と3日目は午前8時から続けて2試合、午後5時から1試合が行われました。
去年から5回ウラの終了後に設けられた10分間の「クーリングタイム」の実施に加えての取り組みで、対策をさらに進めた形です。
観客も協力を求められ、午前と午後の間に球場で待つことはできず、いったん退席しなければなりません。
選手たちの反応は?
試合をした選手たちは「2部制」をどう感じたのか。
大会初日の午後4時から試合に臨んだ群馬の高崎健康福祉大高崎高校の選手からは「涼しくて投げやすかったです」という声が挙がりました。
効果があったとみられる一方で、試合開始まで長い時間が空くことから「1度休んでから気持ちのスイッチを入れるのはあまり経験したことがなかったので難しかった」という声も聞かれました。
初日の第3試合となった岐阜城北高校対奈良の智弁学園はプロ野球・阪神のナイターの開始時間よりも1時間ほど遅い、午後7時前からスタート。
この試合を経験した岐阜城北高校の秋田和哉監督は「照明も明るいし気温の心配も減った。試合を朝早く始めたり夜の時間帯で行うことは今後も考えていっていいと思う」と前向きに捉えている様子でした。
試合は白熱しタイブレークの延長に入る接戦となり、終了したのは午後9時半過ぎでした。
初日は開会式が始まった午前8時半から夜遅くに試合が終わるまで実に13時間かかりました。
また、智弁学園の応援団の生徒が帰宅したのは遅い生徒で、日付が変わり午前0時を過ぎた頃でした。
地方からかけつける応援団や観客についても、選手だけでなく関係者の行程の工夫も求められそうです。
“前向きに対応”した観客や近隣施設
「2部制」の導入で、球場周辺や商業施設の混雑も懸念されていました。
観客の退席が昼食の時間帯と重なり、球場周辺にある商業施設には多くの人たちが訪れました。
ある施設では「2部制」の実施で利用客が増えると見込み、入り口付近のエアコンの設定温度をほかのフロアより低めに。
さらに大きな扇風機を設置した休憩スペースを新たに設けるなど快適な環境作りに取り組みました。
商業施設の利用客からは「昼間の時間が空くのは体が楽なのでいい」という話や「空き時間の過ごし方を悩む」などという意見も出ていました。
高野連の井本亘事務局長は初日の第3試合終了後に報道陣の取材に応じ「観客にも協力いただいて大きな混乱することなく無事に終わらせることができた。今後の検証につなげていきたい」と話しました。
高野連など大会本部は決勝が終わったあと報道陣の取材に応じ、来年の大会も2部制を実施する方向で検討することを明らかにしました。
猛暑の中で
ことしは大会4日目以降に例年どおりの時間帯で試合を実施。
今大会も試合中に足をつる選手が相次ぎ、試合の中断がたびたびありました。
高野連は猛暑などから選手の安全を守る対策として、試合を9イニング制から7イニング制に変更することを検討するワーキンググループを設けて、今後の導入に向けた議論を本格化させることを決めました。
100年を超える歴史があり、数々の名場面を生み出してきた高校野球をどのように持続させ発展させていくのか、模索は続きます。
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