第106回全国高校野球選手権大会は最終日の23日、阪神甲子園球場（兵庫県西宮市）で決勝があり、関東一（東東京）は京都国際に延長十回タイブレークの末に1―2で敗れ、初優勝はならなかった。
「全力でない姿だけは…」
惜敗し、一塁側アルプス席の応援団にあいさつして引き返すと、涙があふれた。
延長十回に押し出し四球で今大会初失点を喫した関東一のエース・坂井遼は「敗戦は自分のせい」と責任を背負い込んだ。それでも「最高の仲間と最高の場所で投げられた」。悔しさと達成感の入り交じった涙だった。
マウンドに上がって4イニング目に入った0―0の延長十回無死満塁。フルカウントから直球が外角低めに外れ、押し出し四球で先取点を与えた。「全力でない姿だけは見せたくなかった。思いっきり投げた結果です」。ここで降板し、後続も犠飛を許した。
それでも、失点は決勝の「2」のみ。大会屈指の速球派で、決勝を含めて全5試合で救援し、準々決勝で自己最速の151キロも出した。「甲子園の力をもらった大会だった」と充実感をにじませた。
今春の選抜大会は背番号10だった。開幕試合で八回から登板して4失点。初戦敗退の悔しさを味わった。だが、主将の高橋徹平が「春は焦ってあたふたしていたが、面構えが変わった」と語るほど今夏は堂々としており、急成長した姿を見せた。
坂井が入学後の2年半で学んだのは「カバーし合う大切さ」という。「誰かが自分の世界に入り込んで行き詰まった時に、カバーし合ってきた」。今大会も坂井、畠中鉄心ら4人が登板し、お互いを支え合った。強力な投手陣がチーム初の決勝進出の原動力になった。
「これからの人生でも、カバーし合う意識は生きてくると思う。自分たちで一つの歴史は作れた。次の代に新しい歴史を作ってほしい」。全国制覇の達成を後輩に託し、最後はさわやかな表情で聖地を後にした。【深野麟之介】
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