(19日、第106回全国高校野球選手権大会準々決勝 京都国際4ー0智弁学園)

 最後の打者を空振り三振に打ち取ると、京都国際の捕手、奥井颯大(そうだい)は冷静だった試合中の姿から一転し、右こぶしを2度大きく突き上げた。「勝手に出てしまった」

 もともとは遊撃手。1年秋、フットワークの軽さやキャッチングのうまさを買われて捕手に転向した。普段は自他共に認める、明るくて元気な性格。しかし、野球で一番自信があるのは「観察力」と言う。

 捕手は覚えること、やることが多い。配球や守備位置の指示、投手への気配り。「難しくて、最初は嫌だった」。今春の選抜大会1回戦で青森山田に敗れ、「僕と(エースの)中崎(琉生(るい))のせいで負けた」と悔やんだ。そこから配球を猛勉強した。

 投手コーチに話を聞いたり、甲斐拓也(ソフトバンク)の配球動画を参考にしたり。学校の授業の合間に職員室でタブレットを眺める姿を目撃したチームメートもいる。

 甲子園に入ってからも手は抜かない。データ班が集めてくれた情報で相手チームを研究した。

 この日、2年生左腕・西村一毅(いっき)のチェンジアップが狙われていると見るや、内角直球を使って打者の目線をずらした。攻撃では、三回の第1打席は変化球を右前安打。四回2死二塁からは、直球を右翼線へ運び、先制の適時二塁打。「次はまっすぐかなって予感はしていた」。こちらも読み通りになった。

 甲子園で中崎、西村の両左腕を巧みにリードし、これで3試合連続完封勝ち。「投手もうれしいと思うけど、0点で抑えて一番うれしいのは捕手だと思う。本当にいま、捕手をやっていてよかった」(大坂尚子)

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