【関東一-明徳義塾】七回のピンチを好守備で切り抜け、喜ぶ関東一の選手たち=阪神甲子園球場で2024年8月16日、吉田航太撮影

高校野球・夏の甲子園3回戦(16日)

○関東一(東東京)3―2明徳義塾●

 相手の「お株を奪う」ともいえる勝利だった。堅守が伝統の明徳義塾とのしのぎ合いを制した関東一は、ここ一番での3連続の好守が勝敗を分けた。

 見せ場は1点リードで迎えた七回の守りだった。関東一は無死一、二塁のピンチを招くと、明徳義塾の馬淵史郎監督が送りバントを成功させるため、4番に代打のカードを切った。打席に立った北浦龍に対し、関東一の3番手・坂井遼(はる)は直球で追いこみ、147キロの直球を投じた3球目の打球はバウンド気味の投ゴロに。坂井は絶妙なフィールディングで二塁走者を三塁で刺した。

 さらに1死一、二塁。今度は内野手が魅了した。続く打者の一、二塁間を破りそうな打球を、併殺シフトで二塁ベース寄りに守っていた二塁手の小島想生(そお)が好スタートを切って横っ跳びでつかんだ。「逆方向狙いかなと思っていて、一、二塁間の打球を意識していた」。二つ目のアウトをもぎとった。

【関東一-明徳義塾】八回裏明徳義塾2死二塁、松井を三振に打ち取り喜ぶ関東一の坂井=阪神甲子園球場で2024年8月16日、渡部直樹撮影

 さらに2死二、三塁。3度目は三塁を守る主将の高橋徹平だ。「直感で来ると思った」と三遊間を抜けそうな打球に飛びつき、グラブの先にボールを入れた。すぐさま起き上がり正確に送球。抜けていれば逆転を許した可能性があるだけに、大きなプレーだった。無失点で切り抜けた坂井も右手を突き上げて喜んだ。甲子園で歴代4位の春夏通算55勝を挙げた馬淵監督も「(向こうの)内野がよく守った。抜けていれば2点入っていた」と脱帽するしかなかった。

 今春のセンバツでは守備の乱れなどから失点し、延長タイブレークの末に1回戦で敗退した。守備の改善はチームの課題だった。克服のために意識してきたのは「攻める守備」だ。失敗を恐れず、向かっていく姿勢を持った方が硬さが出ずに好守につながるという。甲子園で見せた球際の強さはその意識を徹底してきた証しだ。

 小島が「ああいう場面でびびらずに守るのを目標にしていた」と言えば、高橋も「ミスをしても攻めた結果ならチームも盛り上がる。お互いがカバーしようという気持ちになれる」と話す。勇猛果敢に「守った」内野陣がこの日のヒーローだった。【吉川雄飛】

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