(15日、第106回全国高校野球選手権大会2回戦 掛川西0ー2岡山学芸館)

 「ピッチャーライナーの時には気をつけろ」。岡山学芸館の先発丹羽知則は大会前、野球部卒業生で兄の淳平さんからそんなLINEを受け取った。

 2019年8月10日。淳平さんは甲子園のマウンドで打球をほおに受け、骨折した。投げきることはできなかったがその姿は弟の胸に刻まれた。

 「憧れの兄を目指し、この学校を選んだ。兄を超えたい」。そんな思いで挑む甲子園初先発だ。

 一回1死から連打を浴びた。だが相手の4番に対し、「強気にいく」。内角直球で三振を奪い、ペースをつかんだ。

 チェンジアップや縦のスライダー。その残像を生かしつつ、1回戦で15安打を放った掛川西打線にも、臆せず胸元を突いていく。直球が130キロ台でも長打を恐れず攻められたのは、今春から導入された低反発バットの恩恵でもある。

 「インコースを攻めやすくなり、変化球をアバウトに投げてもゴロになる」。心に余裕が生まれ、投球の幅が広がった。

 この新しいバットが生まれるきっかけとなったのが、ほかならぬ淳平さんが顔面に受けたライナーだった。投手のけがを防ぐために芯を狭く、打球速度が遅くなるよう設計されたのだ。

 LINEに対する返信を問われると「自分は捕るよ、と返しました」とにやり。「甲子園は最高の場所」と教えてくれた兄も応援する前で、被安打6で無四球の完封劇だ。

 最後の打者は投ゴロ。ピッチャー返しをがっちりつかんで締めくくった。(室田賢)

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