このうちSNSによるひぼう中傷は、その矛先が日本選手団にも向かいました。

陸上の競歩では女子の代表2人が混合リレーに専念するため個人種目を辞退したことをめぐりひぼう中傷が相次ぎ、選手が自身のSNSで「たくさんの方からの厳しいことばに傷ついた。このようなことが少しでも減って欲しい」と悲痛な思いを訴えました。

JOC=日本オリンピック委員会も異例の声明を出し、行きすぎた内容に対しては警察への通報や法的措置も検討する姿勢を示す事態となりました。

また、バレーボール男子日本代表がイタリアに逆転負けした際もひぼう中傷が相次ぎ、日本バレーボール協会の川合俊一会長が「怒りに任せた暴力的なコメントやアスリート本人の尊厳を傷つけるメッセージだ。見過ごすことはできない」などと、配慮のある対応を求めました。

こうしたひぼう中傷は審判にも向けられ、バスケットボール男子の日本とフランスの試合で、終了間際にフランスが同点に追いつくフリースローにつながった河村勇輝選手へのファウルの判定をめぐり、審判を務めた女性のSNSに「下手くそ」「辞めてしまえ」などと日本語で個人を攻撃するような投稿が続きました。

パリ大会では、IOC=国際オリンピック委員会がジェンダー平等の理念のもと出場選手の男女の比率を50%ずつにするという目標を掲げる中、ボクシング女子で性別をめぐる思わぬ事態が起きました。

アルジェリアのエイマヌン・ハリフ選手は、去年の世界選手権で男性ホルモンの一種、テストステロンの数値が高くIBA=国際ボクシング協会から女子選手としての出場を認められませんでした。

これに対して、IOCは「医療規程を遵守している」などとしてオリンピック出場の正当性を認めました。

ハリフ選手と1回戦で対戦したイタリア選手が最初のパンチを受けたあと「私は耐えられなかった」と棄権したことで議論が過熱し、イタリアのメローニ首相は「男性の遺伝的特徴を持つアスリートは女子の大会に参加させるべきではない」などと競技の公平性に疑問を投げかけました。

一方、アルジェリアのオリンピック委員会は「悪意ある非倫理的な攻撃を非難する。虚偽に基づく中傷の試みは、まったく不当なものだ」と強く非難しました。

ハリフ選手は金メダルを獲得し、大会後、インターネット上でひぼう中傷を受けたとして、パリの検察当局に告訴したことを明らかにしました。

パリオリンピックでは、多様性が求められる時代の中で現代社会が抱える課題が顕著に現れ、今後の大会運営にどうつなげていくのかが問われています。

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