高校野球・夏の甲子園1回戦(10日)
○岡山学芸館1―0聖カタリナ学園(愛媛)●
目指してきた甲子園のマウンドは、エースのスパイク跡が残る場面だった。岡山学芸館の右腕・丹羽知則は1―0でリードの九回、それまで無失点の右腕・沖田幸大からマウンドを引き継いだ。沖田が七回の打席で死球を受けた影響で、丹羽がストッパーを任された。
先頭に安打を許した丹羽は緊張していた。「本当に自分が甲子園に立っているのか」
冷静さを取り戻そうとする中、捕手の佐藤滉起から一塁へのけん制球のサインが出た。素早く一塁に投げ、走者をアウトに。これで平常心を取り戻すと、残りの打者を三振と二ゴロに抑えた。しびれる場面を12球で切り抜けた。
丹羽には甲子園で投げたい理由があった。
兄・淳平さんは2019年夏、岡山学芸館の選手として甲子園に出場した。しかし、兄は2回戦のマウンドで強烈なライナー性の打球を顔面に受けた。左ほおを骨折。それでも兄は次の3回戦も先発のマウンドに上がり、安打も放った。
尋常じゃないくらい顔が大きく腫れた兄がマウンドに立つ姿を見て、「憧れであり、超えなくてはいけない存在」と思い、同じ岡山学芸館に進んだ。兄の受傷事故は、今春から高校野球で低反発の金属バットが導入される契機となった。
甲子園出発を前にした兄からのアドバイスは「ピッチャーライナーだけは気をつけろよ」だった。
兄が果たせなかった、勝利時の甲子園のマウンドに弟は立てた。丹羽は「(兄に)やったよって報告したい」と笑顔を見せた。【林大樹】
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