ボクシング女子57キロ級準決勝で、勝利した台湾の林郁婷(左)=パリで7日、ロイター

 パリ・オリンピックのボクシング女子で性別が議論になっている台湾の林郁婷(りんいくてい)について、台湾の行政院(内閣に相当)は8日、選手への人身攻撃が起きているとして、法的措置を念頭に置く証拠収集を弁護士に依頼したと明らかにした。林は10日(日本時間11日)の決勝でポーランドの選手と戦う予定で、「(台湾全体が)林の後ろ盾とならなくてはならない」(卓栄泰行政院長=首相に相当)と政府をあげて支援する構えだ。

 57キロ級に出場している林は、66キロ級のアルジェリアのイマネ・ヘリフとともに性別を巡る議論の対象となっている。7日の準決勝ではトルコの選手に圧勝。試合後にこの選手が両手の人さし指を交差して「X」の形を作る仕草をし、女性の性染色体を示したと報じられた。

 林らは東京五輪にも出場したが、昨年3月の世界選手権の性別検査で不合格となった。世界選手権を主催した国際ボクシング協会(IBA)は今月5日の記者会見で当時の検査で2人の男性ホルモンのテストステロン値が基準より高かったと改めて主張。ロシア出身のクレムレフ会長は「国際オリンピック委員会(IOC)は競技を破壊している」と批判した。IOCはIBAの組織運営などのあり方を問題視し、統括団体としての承認を取り消している。

 台湾の頼清徳総統は7日に自身のフェイスブックに投稿し、林が「IBAの悪意ある攻撃を受けている」とした上で、「選手が後顧の憂いなく出場し、自信を持ったパフォーマンスを出せるようにするのが、政府が最も心を配っていることだ」と強調。台湾の体育署(スポーツ庁に相当)は事実に基づかない情報を発信し続けているとして、IBAに対して「厳正な抗議」を表明した。【台北・林哲平】

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