思いきりのいい攻撃参加を持ち味とする浦和の伊藤敦樹選手(右)。左は東京ヴの山田楓喜選手=埼玉スタジアムで2024年3月3日、宮間俊樹撮影

 飛躍の昨季から一転、今季は状態が上向かず苦悩するのが、J1浦和レッズのMF伊藤敦樹選手だ。20日のJ1第9節、ガンバ大阪戦は決定的なミスが出て「メンタル的にくる」。一方で復調の兆しも見せており、葛藤を抱える25歳の有望株の覚悟はぶれていない。

 ホームの埼玉スタジアム、4万人超の歓声が悲鳴に変わった。0―0の後半10分、DF渡辺凌磨選手の左サイドからのクロスは相手GKを越え、フリーの伊藤選手の元へ。そのまま慎重に頭で合わせたが、ボールはポストを直撃して外れた。同33分にはパスを受けたところで相手にボールを奪われてカウンターを許し、痛恨の決勝点を献上した。

 伊藤選手は試合後、失点場面を振り返り「少し判断に迷い、タッチが大きくなったところで取られてカウンター。試合を崩してしまった」と沈痛な表情を見せた。中盤までは随所に連動した攻守を見せたものの、ミスが敗戦に直結。率直な思いを吐露した。

昨季はアジア・チャンピオンズリーグや日本代表でも存在感を発揮し、飛躍の1年を過ごした浦和の伊藤敦樹選手(左)。右は酒井宏樹選手=埼玉スタジアムで2023年5月6日、北山夏帆撮影

 「これまでの試合に比べたらうまくいっていた分、もったいなかったですし、そこから失点してしまっている。今季が始まって、自分的にはうまくいかない、そういうのが続いているので、メンタル的にもいろいろくるものはありますね」

 さいたま市出身で浦和の育成組織、流通経済大を経て2021年から浦和でプレーする。身長185センチの大型ボランチとして、豊富な運動量や思いきりのいい攻撃参加を武器に出場機会を増やした。昨年は日本代表にも選出されて3試合を経験。初めて先発した9月のトルコ戦では豪快な左足のミドルシュートで代表初ゴールを決めて、注目を浴びた。

 ペアマティアス・ヘグモ監督が就任した今季は、これまでより前のポジションとなるインサイドハーフで主に起用されている。ヘグモ監督が求めるのはボール奪取とともに、攻撃で長い距離を走って相手ペナルティーエリア内に進入し、脅威を与えること。ただ、周囲との連係面の課題もあり、序盤は持ち味のダイナミックさを出し切れない試合も多かった。

 それでも徐々に本来の動きを取り戻す伊藤選手に、ヘグモ監督は「より危険なエリアに現れる場面が増えると思う」と期待。ガ大阪戦のプレーも踏まえて、「ミスはサッカーの一部で問題ではない。次の機会により良い、正しいプレーをするだけ」と発破をかける。本領を発揮できず時に批判的な声も受ける伊藤選手も、「やり続ける」という言葉を繰り返す。生粋の「浦和育ち」の逆襲は、ここから始まる。【角田直哉】

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