(8日、第106回全国高校野球選手権大会1回戦 興南0―5大阪桐蔭)

 大阪桐蔭が、初戦から地力の高さを発揮した。

 三回。先頭の右打者、岡江伸英が口火を切った。まっすぐをおっつけて右前安打を放つと、四球などで1死一、二塁に。1番吉田翔輝が136キロの直球をとらえ、右中間に先制の2点三塁打を放った。続く宮本楽久も初球の直球を中前にはじき返し、1点を加えた。

 興南の先発田崎颯士(りゅうと)は最速149キロの直球とスライダーが鋭い好左腕。先発メンバーに左打者が6人並ぶ大阪桐蔭は試合開始直後こそ、キレのある変化球に苦戦していた。

 だが、凡打になった直後、すぐさま選手間で情報を共有した。「低めのスライダーは捨てる」「まっすぐを狙おう」。その通り、田崎から放った8安打のうち7本が直球を打ったものだ。興南の捕手丹羽蓮太は「1巡目で配球を研究された。甘い球を1球でしとめられた」と脱帽した。

 岡江は「打席に立った選手の情報だからこそ信頼できる」。チームの決めごとを徹底する実行力、試合中の修正力、それを培う豊富な実戦経験。いずれも甲子園で春夏通算9度の優勝を誇るゆえんだ。

 監督として歴代最多通算勝利数を更新する70勝目を挙げた西谷浩一監督は「特に私から指示はしていない。選手はいつも通りやってくれた」とたたえた。

 昨夏は大阪大会決勝で履正社に完封負けして甲子園出場を逃し、「そこからスタートしたチーム」(西谷監督)。並々ならぬ思いで臨んだ今年の大阪の夏は、準決勝で履正社と再戦して12―2で圧勝。勢いそのまま2年ぶりの大舞台にやってきた。

 この日、春の選抜で4番だったラマル・ギービン・ラタナヤケは代打にまわり、背番号1の平嶋桂知(かいち)は投げなかった。「軽い言葉ではなく、本当に『全員野球』で戦うチーム」という西谷監督の言葉通り、まだまだ底力は見せていない。(室田賢)

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